当サイトでは、米国の学資ローン問題が深刻であることを何度も指摘してきた。
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これに関してCNBCが興味深い指摘をしている。以下は筆者訳である。
大学を卒業したばかりの人にとって、12月は厳しい現実の到来を意味する。
学生の借金の大半を占める連邦学生ローンには通常、債務者に返済を開始させるまでに卒業後6ヶ月の猶予期間が存在する。
つまり卒業生が最初の請求書に直面しつつあることを意味する。
CNBC, “How to start paying back your student loans”, 12 Nov 2019
一部例外はあるが、米国の多くの大学は、
- 9月から12月までの秋学期
- 1月から5月までの春学期
と9月から翌年5月までのセメスター制を取っている。
もちろん、12月に卒業する人もいれば、クォーター制やトライメスター制などで様々な時期に卒業する人もいるが、多くの米国大学生は5月末もしくは6月に卒業することになる。
以下はGoogleトレンドで米国での「卒業」に関するトピック検索のトレンドを示しているが、5月が最も多くなる。(日本で設定すると3月が最も多い。)
6ヶ月の猶予があるということは、今年米国の大学を卒業した人の猶予期間が終了するのが11月末から12月ということになり、これから学資ローンの返済に追われる人が新たに供給されるということである。
米国での大学卒業生の7割は卒業時に平均約30,000ドルの借金を抱えている。しかもSallie Maeのレポートによれば、
- 学資ローンの債務者の64%は一人で(家族の助けを得ずに)返済する
- 債務者の半分は返済方法すら調べていない
といった状況が指摘されている。
12月になると即危険ということではないが、2016年だと190万人もの学士号取得者、78万人もの修士号取得者が供給される米国において、その7割が多額の負債を抱えており、その金融リテラシーに不安があるとなれば、頭の隅に入れておいても損は無いだろう。
参考文献[1]:CNBC, “How to start paying back your student loans”, 12 Nov 2019
参考文献[2]:SallieMae, “How America Pays for College 2019”
参考文献[3]:EDUCATIONDATA.ORG, “Number of College Graduates Per Year (2019)”
参考文献[4]:栄 陽子留学研究所「アメリカの大学のシステム | 大学留学」