超高学歴社会で学資ローンに追われる米国社会を見ていれば、皆が大学を重要視しているように思える。しかし、ギャラップ社の調査によれば、それとは真逆の結果であり、大学教育を重要と思わない米国人が増えている。
以下は米国50州およびワシントンDCに住む18歳以上2,033人に対する調査である。最初のグラフは、大学教育の重要性を問うたもので、2013年と比較されている。これによると、「とても重要(Very Important)」という回答が2013年70%だったのに対し、2019年に51%まで減っており、他の回答を見ても以前より重要視されなくなってきている傾向が分かる。
また、年齢別に「大学教育を非常に重要」と回答した人の割合を見てみると、2013年時点では若年層ほど重要視する傾向があったのに対し、わずか6年で逆転しているということが分かる。これはギャラップ社も記事中で指摘しているが、大学の授業料の高騰でハイリスク・ローリターンとなっているのが要因と考えられる。
そしてもう一つの理由が政治性である。以下は、性別・人種・支持政党別に「大学教育を非常に重要」と考えている人の割合を示している。これによると、男性・白人・共和党員が重要視しない傾向を示している。
ギャラップ社は別の調査で、大学のリベラル色により、共和党員を中心に大学に対する信頼性を失っているという傾向を明らかにしている。全体的に大学は自由な政治的課題を追求できる場であると考える米国人が多いが、共和党員にとってはそれが行いにくい環境になってきているということが背景にある。
これらのことについて、「社会階層ごとの格差の是正につながる」として肯定的に解釈するか、「大学の自由が損なわれている」と否定的に解釈するかは見解が分かれるだろうが、事実として共和党員を中心に、大学教育の重要性が軽視されつつあるのだ。
参考文献:Gallup, “Half in U.S. Now Consider College Education Very Important”, 12 Dec 2019