要約
- 政治の安定化によってエジプトの原油生産量が急回復している
- 生産拡大に大きく貢献したのがBP社による大規模な投資がある
- エジプトの原油大臣が言う原油適正価格は「控えめな願望」という水準
再びエジプトの原油・天然ガスがBP社最大の投資先になりました(OilPrice.com)
- BPは過去2年間に68億ドルをエジプトの原油・ガスに投資した
- 昨年12月にはイタリアのEni社からヌール北シナイ・オフショアコンセッションエリアへの参加持分の25%の購入に合意した
- 西ナイルデルタ計画のフェーズ2でエジプトオフショアからの最初の天然ガス生産を行い、フェーズ3では2019年後半に油田生産が開始されることが発表された
- 3フェーズの合計でエジプトの原油・ガス生産量の約20%に達する予定
エジプトの石油相が原油の適正価格は60-70ドル/バレルと発言(CNBC)
- エジプトの原油大臣がCNBCに対し生産者・消費者双方を満足させる原油価格について回答
- 適正価格が存在し、OPECと非OPECは減産の取決め通して目標に近づけている
- エジプトは非OPECだが重要な石油・天然ガス生産国
- 2019年に1日当たりの生産量を67万バレルにまで増加させることを目標としている
解説
原油といえばどうしてもサウジアラビアなどのOPEC諸国、非OPEC諸国でも米国やロシアなどのイメージが強く、実際に生産量も非常に多い。エジプトはこれらの国に比べれば生産量も埋蔵量も少ないが、元々北アフリカ最大の原油精製能力を持つ国であった。(JPEC, 2015)
「元々」といったのは「アラブの春」以降の政情不安と原油価格の低下の影響を受けて原油生産量が大きく落ち込み、アルジェリアなどに生産能力で抜かれているからだ。しかし、現職大統領のアッ=シーシ政権が安定しており、2018年の大統領選挙も他候補の辞退も相まって圧倒的な得票率(97%)で勝利して以降、急速に生産量が回復するに至っている。(下図はエジプトの原油生産量。単位は1000バレル/日)
source: tradingeconomics.com
生産量の急回復に大きく貢献したのが前述のBP社による積極的な投資であり、他にも中東・アフリカ諸国への積極的な投資を計画しているようである。
一方でエジプト原油省の大臣タレク・アル・マラ氏が言う「適正価格」というのはあくまでも生産者余剰と消費者余剰の両面を見た話である。世界経済後退減速やイラン制裁緩和などもあってOPEC Basket Oil価格は2018年に大きく下落した後、現在はロシアの減産合意によって少し回復し61ドル台であり、60-70ドルの範囲内である。
とは言え、この価格は「控えめな願望」というべき値である。サウジアラビアなどOPEC諸国の財政均衡原油価格は70-80ドルあたりの国が多く、60-70ドルでも財政赤字に大きく寄与する国が多いと考えられている。しかし、今後の景気減速予想などを考えれば、そこまでは求められないというのが実情だろう。
参考文献
JPEC(2015)「北アフリカ腫瘍個億の石油と天然ガス動向(1)」『JPECレポート』
OilPrice.com, “Egyptian Oil & Gas Is BP’s Top Investment Destination Again”
CNBC, “$60 to $70 is a fair price for a barrel of oil, Egypt’s petroleum minister says”