なぜ大麻産業に期待していないのか

大麻や医療大麻の合法化が進みつつある国がある中で、関連する企業も多くある。ティルレイは先日はレディット民の標的になっていたこともあって急落するなど、一部の投資家の注目を集め続けている。今後、優良な企業に投資が集まり、淘汰も進むというのが大方の見方である。

それはそれとして、筆者は大麻産業に期待していないし投資もしていない。今後、競争を勝ち抜いて大きく成長する大麻関連企業も出てくるとは思っているが、それらを探そうとも思っていない。

それは何故かと言えば、これだけ注目を集めているのは「多くの国で未だ大麻が禁止されている」中で合法化の動きがあるからだ。合法化が進めば市場が拡大するという予想が働く。実際そうだろう。しかし、合法化が進めば、それだけ供給も増えることに他ならない。

例えば、大麻であれば嘗てタイ北部の山岳地帯は「黄金の三角地帯」と呼ばれるようなケシの一大産地であった。(今は当局の取締りの厳格化や、王室による「適切な産業への移行支援活動」などにより、以前ほどではない。)

なぜ山岳地帯で隠れて栽培するかと言えば「供給が少なく高く売れるから」である。しかし、合法化が進んで、それこそ誰でも栽培できるような物になれば、途端に有り触れた物になってしまう。大麻が有り触れた社会というのは筆者は見たくないが、仮にそうなったとして、市場は大きくてもそれほど儲かるものではならなくなると言える。

勿論、タバコのように国が管理するような形を取るといったシナリオも考えられるが、それとて淘汰が進んだ先に特定の大企業が存在する世界、或いは管理者としての国有企業が存在する世界など、投資家は結局は「勝つ企業を見分ける力」が必要になる。

また、薬物関連は他のコモディティの影響も受けやすい。これは大麻ではなくコカインの話だが、ペルー中央の山岳地帯では、コーヒー価格の下落により、コカの木の栽培に転換する農家が増えているという。

コーヒーは最近は回復傾向にあるが、それでも以前の水準に比べればまだまだ低いのは、以下のチャートを見ても分かるだろう。(コーヒー先物直近限月月足)

参考:The Conversation, “Cocaine: falling coffee prices force Peru’s farmers to cultivate coca”, 9 Feb 2021

パンデミックによってコカインの流通価格も下落しているが、それでも他のコモディティに比べれば流通価格が高く、コーヒーが売れないとなれば容易に他の作物に転作するという動きが見られるのが発展途上国での農家の傾向と言っても良い。これは大麻においても同じ話である。

つまり、大麻産業に投資するならば、今関連企業で溢れかえっている中から、生き残る企業を見抜き、その上で他のコモディティ価格の影響も考えながら投資していかなければならず、この界隈へのい投資は非常に大変だというのが筆者の考えである。

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