「原油が枯渇するか」と問われればYes and Noである。物理的に全ての原油を掘り出すことは理論的には可能であっても、恐らく人間はそこまで原油を掘り続けない。なぜなら原油採掘はビジネスであり、仮に原油の採掘コストが200ドル/バレルとかになるのであれば誰も掘らないだろう。つまり物理的に枯渇することは経済的に有り得ないが、経済的に枯渇することは十分に有り得る。
では、採算を確保できるか微妙な油田はどうか。それが限界油田(マージナル油田)である。
エッジマーケット紙がペトロナスのActivity Outlook 2020-2022を取り上げ、その中で4つの限界油田開発を検討していることを紹介している。
これら油田の開発計画は2013年に起ち上げられ、当時のブレント原油は100ドル/バレルを超えていたので十分に採算が取れるものであったが、その後2014年以降の原油価格の値下がりにより計画が凍結された。
これら油田の損益分岐点は60ドル/バレルであり、2016年には30ドル未満も時もあるなど到底利益を出せるものではなかった。
しかし、2019年は原油価格が回復し、平均価格が64ドルにまで戻ったので開発計画が再開されそうだということだ。
しかし、損益分岐点が60ドルに対し、最近のブレント原油価格は65~66ドル台である。米中交渉がポジティブな方向に向かっているということで2020年の原油価格の見通しは70ドルを超えるという予想が多いが、つい数年前までの値下がりを思えば余裕のある価格ではない。
そういう意味で60ドルというのは最近の水準における限界価格と言えるわけであり懸念する声が多い。筆者も来年の世界経済は持ちこたえるという予想を持っているが、再来年以降は本格的にリセッション入りすると考えており、原油価格も下がる可能性が高いと見ている。
もっとも、限界油田を開発していたら、結果的に非常に大きな油田であることが判明するというケースもあったと指摘されており、多くの限界油田を並行的に開発することは、リスクを分散させる効果があるとは思われるが、それでも疑問である。
参考文献[1]:The Edge Markets, “Petronas to develop four marginal fields”, 24 Dec 2019
参考文献[2]:Petronas Activity Outlook 2020-2022(PDF)