マレーシアとインドネシアは対EUパーム油提訴を進めていたが、インドネシアは12月に提訴したのに対し、マレーシアは提訴から撤退した。代わりにマレーシアは2020年に予定されているEUでのレビューにより、バイオ燃料として扱う作物を変更するように交渉することを決めている。
元々、両国はEUが2024年からパーム油をバイオ燃料として利用することを認めないと決定した事に対して反発したことが起因である。
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しかし、2019年末頃にはマレーシアとインドネシアのスタンスにはかなり温度差が生まれている。その背景にはインドがパーム油輸入を増やしたことで市場が多様化したことが影響している。
それでも2020年1月はインドのパーム油輸入が20%近く減少した。これは新型コロナウイルスに伴う原油価格下落の影響も受けているが、インド市民権法に対してマレーシア政府が批判したことで、インド政府がマレーシアからのパーム油輸入に圧力をかけたことも大きい。
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それでもマレーシア政府は強気である。現に世界最大のパーム油生産企業でマレーシア国有企業であるFGVホールディングス<KLSE: FGV>は、インドと中国による需要減少は一時的なものであるという見方を示している。
中国とは潮位契約をしており新型コロナウイルスの影響は限定的であり、インドの需要減少に対してはパキスタンなど他の市場への出荷の見込みがあるとしている。1~3月はパーム油生産量が少ない時期であり、新型コロナウイルスの流行と重なったのも不幸中の幸いである。
更にインドからの注文に関しては上記記事で触れたように、子会社のマラヤ製糖がインドから13万トンの粗糖を購入する方針を示したことで、政府間の問題を解消しようとする動きもある。この辺りもマレーシア政府が強気たる所以である。
参考文献[1]:Bloomberg, “Palm Giant Says Blow to China, India Sales Is ‘Temporary’”, 10 Feb 2020
参考文献[2]:Reuters, “Malaysia backs off from WTO suit against EU on palm oil”, 14 Feb 2020
追記:マレーシアのテレサ・コック一次産業大臣は、WTO提訴から撤退するという一連の報道を否定した。今後は二国間協議を通じてEUと一連の問題を交渉することになるが、WTO提訴のオプションを捨てたわけではないとしている。