日本経済新聞が、米中貿易交渉の第一段階の合意により上昇してきた大豆先物価格の上値が重くなってきており、ブラジルが過去最高の豊作であること、新型肺炎による大豆油需要の減少リスク、投機筋が売りに転じていることなどから大豆の上値が重くなるという見方を示している。
日本経済新聞「大豆、楽観できぬ上昇 ブラジルで過去最高の豊作」2020年2月14日
筆者は大豆自体よりも、その主用途である大豆油、更にはパーム油との乖離に注目すべきと考えている。以下は2018年12月以降のパーム油先物<FUPOc1>(左軸:赤色)と米国大豆先物<ZSH0>(右軸:紫色)の推移を示している。
いずれも2019年末は大幅に上昇していたが、新型コロナウイルスによる原油価格の下落により2020年から急落している。しかし、中長期的に見て両者は非常に似たトレンドを描いているが、最近は少し乖離が大きいようである。
大豆油とパーム油はコモディティとして非常に性質が似ている。両方とも食用油として重要なだけではなく、バイオエタノールとしても使われる。故に両者の乖離が長期間続くケースは珍しい。
過去において比較的長く乖離が続いたのは2012年である。2012年4月以降、パーム油が大幅に下落しているが、これは、
- マレーシアにおけるパーム油在庫の増加
- パーム油生産におけるRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認証の活発化
- インドネシアルピアの下落
- パーム油廃液の再生利用の推進
などが重なったためである。環境への影響懸念で価格が下落傾向にあったのは2019年と似ているが、2013年下半期にはパフォーマンスの乖離が狭まっている。
2019年末のパーム油の大幅上昇はインドにおける需要増大が理由だが、
- 新型コロナウイルス
- 景気後退懸念
- インドとの外交問題
などで2020年に入ってから大幅下落しており、ポジティブな要素は少ない。大豆油も日本経済新聞が言うように価格上昇要因は少ないが、両者のパフォーマンスの乖離を見れば、寧ろパーム油が更に下落する余地があると思える。