水産加工業の上場企業が多いベトナムにおいて、今年はエビの輸出で問題を抱えている(関連記事)が、それだけでなくホーチミン市から南東部に位置するバリア=ブンタウ省の水産加工業者は労働力不足に悩まされている。
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省内には900の水産加工業者が存在するが、その約60%に併せて7,000人の労働力不足が発生している。
一般的に水産加工工場は水産物を多く扱うため「臭いがきつい」環境で、更に鮮度を保つため「低温」かつ「高湿度」という悪条件での労働になることが多い。
バリア=ブンタウ省は以前に紹介したように、不動産価格が上昇し続けるハノイ、ホーチミン、ダナンに次いで市場が過熱しつつある地域の一部であり、工業団地なども数多く存在する。
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当然、工業団地などでの労働環境も賃金も相対的に良いケースが多く、結果的に水産加工業者は「良い職場が見つかるまでの繋ぎの仕事」として認識されており、熟練労働者が育たないという問題が発生している。
人材確保のため、給与・残業代の増額、宿泊施設と交通費の無償提供、追加のボーナス、食事の提供などあの手この手を使っているが、それでも熟練労働者を中心に人材の流出が相次ぎ、人手不足に陥っている。
現在、ベトナムは政府自身が労働生産性の低さを強く問題視している。その中でも水産加工業は低賃金非熟練労働者に依存する現状にあり、問題はかなり深刻かもしれない。
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今後、水産加工業が成長するためには、単純に魚介類をさばくといった単純労働だけでなく、高品質製品の製造に対応できる労働者の育成と確保が重要になってくる。
なので水産加工業者も何もしていないわけではない。例えば、農場出身の非熟練労働者が多く、収穫期になると農場に帰るため、長期雇用契約を嫌がる傾向があるという。そこで一部の企業は、水産加工工場を敢えて農場に設立し、労働者の訓練と定着を図るなどを行っている企業も出てきている。
参考文献:VietnamNet, “VN seafood processing companies lacks skilled labourers”, 11 May 2019