ベトナム運輸省は5月8日、国道45号線とギソン区間の南北高速道路の入札における予備文書を公開した。文書にはプロジェクトと概要と入札の評価基準が示されており、予備評価は5月8日から7月8日までの2ヶ月間行われる。
南北高速道路は、ハノイからカントーまでベトナムを南北に縦断する全長1,941kmにも達する大規模プロジェクトである。2017~2020年に国会で予算が承認された分は654km分で、総投資額は51億ドルで、うち24億ドルは国の予算、残り37億ドルが外国からの財源を利用する。
今回の予備文書は、43km分であり、総投資額は2.8億ドル、うち0.8億ドルが州の予算であるが、多くは民間から資金調達を行うPPP(官民パートナーシップ)によるプロジェクトである。
とにかく一連のプロジェクトの規模が大きく、日本、韓国、フランスなど多くの外国投資家から注目を集めている。
しかし、エコノミストであるNgo Tri Long氏が興味深い指摘をしている。入札の資本要件と施工経験が厳格であり、国内投資家の機会を阻む可能性があるということだ。
これらの要件を厳しくすることは、(変なのが湧いてくるので具体的なプロジェクト名は挙げないが)諸外国のインフラ投資における遅延や事故などを回避するための背景があると思われる。
しかし、厳格にしすぎることで国内の事業者が参入しにくくなり、現実的に外国の大企業しか入札できなくなるのではないか、というのが上の指摘である。
逆に海外事業者しか入札が難しいとなってしまうと、マレーシアのECRLの問題のように、国内で反発が出る可能性もある。
国内の特定事業者を有利にするという入札なら日本でもよくある。例えば、官公庁などで特定のシステムを別のシステムに作り変える必要が生じた時に、要件に「前のシステムについて熟知していること」という文言を足すことで、事実上1社(変更前のシステムの開発者)しか入札要件を満たさないといったことはよくある。
しかし、現政権の汚職を撲滅しようとする姿勢などを見れば、かなり厳格に進めようとする方針は一貫しているように思える。実態としてどうなるか注目である。
参考文献:Hanoi Times, “Foreign investors spotlight on Vietnam North-South Expressway”, 12 May 2019