ハノイでも進む都市圏拡大政策【ベトナム】

ホーチミンの地区トゥドゥックを含む3区が中央直轄市として統合されたように、ハノイでも似た動きがある。これは、経済成長著しいベトナムの都市圏において、都市エリアの拡大に伴う効率化や最適な資源配分を目指すのが第一の目的である。これはハノイやホーチミンなど大都市にとっての思惑であるが、その周辺地域は「その対象として選ばれる」ための動きが活発である。

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「ハノイの中央直轄市」としての地位を目指すソンタイ

3月17日のハノイ市党委員会とソンタイ党委員会の首脳会議において、ソンタイ側は、ホアラック衛星都市計画とソンタイ衛星都市計画に基づいて、ハノイ市の中央直轄市としてソンタイ市を設立を検討することを提案している。

ベトナムの行政区は第1級行政区から第3級行政区まで分かれ、第1級行政区は省(tinh)と中央直轄市(trung vong)、第2行政区は県(huyem)や市社(thi xa)、第3行政区は市鎮(thi tran)や社(xa)がある。ソンタイは市社であり第2行政区に該当する。ハノイ市やホーチミン市などは第1級行政区である中央直轄市であり、市と市社がややこしいので、文献によってはソンタイ「町」と訳されていることもある。

ソンタイは次の地図のように、ハノイ市の西部に位置する。ハノイ中心部から30~40kmほどで郊外・衛星都市としての地位を確立しつつある。実際、2020年までの開発目標17の内16を達成しており、ソンタイの歳入も計画以上の数値を達成している。

ソンタイの位置
出典:Google Map

しかし、人口は未だ23万人ほどで、南部の国立公園を除いても多くの地域が田畑であり、市街地は幹線道路沿いに位置する北部の一部に過ぎない。経済成長は安定的であるものの著しいというわけではなく、産業構造の改革も不十分である。ソンタイは新たな高速道路の建設など複数の投資プロジェクトを進めているが、これを不十分とし、更に投資を集めるためにハノイ市の中央直轄市への昇格を求めている。

なお、この中央直轄市は「ハノイ市の管轄」という意味で、第1級行政区である中央直轄市とは異なることに注意である。中央直轄市管轄の中央直轄市として最初に作られたのが冒頭で述べたトゥドック市である。

「区」への昇格を目指すタインオアイ県

タインオアイ県はハノイ市管轄の「県」である。ハノイなど中央直轄市には、基本的には「区」と「県」が存在する。日本の行政区分の感覚で言えば、東京都に対して23特別区と市町村があるイメージで良い。ベトナム行政区の感覚で言えば誤解を恐れずに言えば「都市区域」と「農村区域」を分けるためのものであり、タインオアイ県は「タインオアイ区」への昇格(農村区域から都市区域へ)を目指していると言って良い。

タインオアイの位置
出典:Google Map

タインオアイ県は23日にハノイ党委員会と会談している。会談では、建設投資計画や土地利用権入札など6つの勧告が定期され、更にタインオアイは2028年までに地区として昇格できるように請願した。

タインオアイの方がハノイに属するだけあって中心部から近い。基本的に農業が中心で51の伝統工芸村など地域の伝統・文化資源が豊富な地域であり、県としてはそれを活かした観光や農業を中心とした開発を目標としている。

それだけでなくハノイ側としては、産業・商業インフラの投資を進めたいという意向もあり、貿易センターの建設などの動きもある。問題としては景観や環境を維持しながら産業構造を改革していくというのがポイントであり、今後どのように進んでいくか興味深い。

参考文献

vietnam net, “Đề xuất thành lập thành phố Sơn Tây trực thuộc Hà Nội”, 17 Mar 2021

vietnam net, “Hà Nội: Thêm huyện Thanh Oai muốn lên quận”, 23 Mar 2021

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