ビットコインの将来価値がゼロである2つの理由

ビットコイン(BTC)価格は一時ほどではないが執筆時点(2021年3月23日)で50,000ドルを超えている。仮想通貨投資は税制面で不利なので、ここまで値上がりしてしまった現在においてはあまりオススメできるものではないが、本稿はそういうのはさておき「遠い将来の価値はゼロ」ではないかという話である。

Not ESG投資

ESG投資がバズワードしていた時期は過ぎ、投資スタイルが一般にまで普及しているとは言えないが、投資適格の対象としてESGの認証を受けているかなどを考慮する機関投資家などは出現している。問題は、そもそもESG自体の概念が国際的な統一されているとは言い難い状況で、「どの」ESG認証がデファクトスタンダードになるか未だ不明というところである。

さらに一般目線ではESGが従来のSRIなどとどう違うかもあまり明確には区別されていないようである。

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それはさて置き、「何がESGか」というよりかは、「何がESGでないか(Not ESG)」という点の方が分かりやすい。例えば、ESGの潮流により石炭セクターは社会的に重要な鋼材を作る原料炭の生産も担っているのに資金調達ができない状況になっている。これは明らかに「石炭=環境に悪」というところから出資・融資する投資家・金融機関が激減しているところにある。

しかし、誰もが知るようにビットコインのマイニングは非常に多くの電力を食うので、環境的には明らかに悪い。「通貨」として考えてみると決済速度も遅く、エネルギー効率的には非常に無駄が多い。

日本経済新聞は「暗号資産投資にESGの宿題」という暗号資産の環境への影響についての議論を紹介している。

確かにビットコインなど仮想通貨は、暗号「資産」としての地位を確立したように見えるが、投資資産として検討するのであれば、大きな投資主体ほどESGであるか、Not ESGではないか、という基準が必要になってくる。

もし、「ビットコインがNot ESG」であるという何らかの「認証」を受けたり、石炭のように社会的に忌避される存在になれば、手出しする投資家が激減するわけであり、その価値は大きく毀損される。このシナリオは十分に考えられる。

ビットコインが発行されなくなった時

こちらは遠い将来(2140年)だが、この時期にビットコインの発行上限2,100万枚に達すると考えられている。既に発行枚数は1,800万枚を超えている状態である。基本的にビットコインは取引の承認プロセスが必要となり、その承認の過程で送金時の手数料と新規に発行されたビットコインがマイナーの報酬となる。

現時点では手数料よりも新規発行のビットコインの方が報酬が多く、マイナーが大量のGPUと電力を消費して採掘している状態である。今、GPUが高騰しているのはビットコイン価格が高く、マイニングがペイする状態だからである。

では、2140年あたりになって新しくビットコインが発行されなくなった状態ではどうか。これはサトシ・ナカモトも論文で想定しており、「送金者が承認してもらうために手数料を高く設定することで承認者がいなくならない」事で環境が維持されるという旨が書かれている。

仕様上、ビットコインは取引を承認する者がいなくなれば、仮想「通貨」として無意味なものになる。そうすると、送金者は「承認をしてもらう為に手数料を上げる」という手段を取る必要が出てくる。これにより「ビットコインに価値がある限り」承認者はいなくならないというのがサトシ・ナカモトの考えである。

しかし、手数料を高くしなければならないとなれば少額決済で使うには不都合が多い。ある程度金額が多くなければビットコインで送金するには無駄が多い。しかし、大口利用なのにわざわざビットコインで送金するとなれば、「ろくでもない用途」しか思いつかない。(複数の送金をまとめて実行みたいな仕組みはある。)

最近は単純なビットコイン送金は「足がつく」のが認知されてしまっているので、アングラマーケットでは複数の仮想通貨を利用した相対取引が多いと聞くが、そんな使い方が主流となってしまえば、ますますESGからは遠いように思える。

さて、「何で100年以上も先の話をしているのだ」と思う人もいるかもしれない。この記事の読者の多くは100年先に生きていないから無関係と思うかもしれない。しかし、「資産」という以上、長期的な価格推移や相続などの視点が必要になってくるはずだ。

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