要約
- ベトナムは水産加工・輸出業の上場企業が多い
- 水産物の生産量・輸出額は増加傾向にあるが、2018年は大きく低下した
- 品質・価格面で問題が多いのが原因
2019年はベトナムのエビ輸出は困難に直面するだろう(Vietnam net)
- 2018年のエビ養殖面積は736,000 haを超え(前年比で3%増)、生産量は76.2万トン(前衛6.3%増)
- 一方でエビの輸出額は36億ドルと前年比7.8%減
- 親エビ供給の90%が輸入依存という構造的問題と飼料価格の高さで輸出競争力が低い
- 米国やEUなど食品安全規制の高まりにより、一部の小規模養殖場・加工施設での化学物質の利用が輸出に影響を与えている
- 2019年のエビの輸出目標は42億ドル、生産目標は78万トン
当サイトでわざわざエビを取り上げたのは、ベトナムは水産加工業者・輸出業者が多いからだ。どれくらい多いかと言えば、ホーチミン証券取引所(HOSE)ハノイ証券取引所(HNX)を合わせた上場企業761社のうち、Seafood Product Preparation and Packagingに属する企業が17社もある。日本だと東証全て合わせても、水産・農林業に属する企業は3,658社のうちわずか11社のみである。
(2019年3月15日時点)
実際、下図のようにベトナムにおける水産物の生産量や輸出額は増加傾向にあり、特に養殖生産の増加は著しい。水産物輸出の1/3以上がエビである。1人当たりの国内消費も年々増えており、ベトナムに行ってみるとエビを使った料理も非常に多い。
一方で、日本で見かける輸入エビはインド、タイ、インドネシアのものが多く、ベトナムのものは3ヶ国に比べれば露出度が低い。
実際、ベトナムのエビ輸出の主要マーケットは米国で、バナメイエビの冷凍むきエビが輸出の4割を占める。次いで冷凍むきエビの輸出が多いのがEUで、日本は3番目にとどまる。その米国とEUでは規制強化によって輸出額が減少している。(米国は前年比3.3%減、EUは2.8%減)
大きく輸出が減少しているのがブラックタイガーで、最大の輸出相手国である中国は前年比で28%、次いで日本が9.2%と大きく減少している。その理由は原料となる親エビの供給不足による価格高騰である。また、更に飼料となる魚粉価格の高騰も価格競争力に影響を与えており、三重苦の状態である。
異様に株価が安い上場企業もあるが、ベトナムの水産加工業者にはこうしたリスクがあるので、現状では特に注意したい。
参考文献
水産物・加工品輸出拡大協議会(2016)「ベトナム市場調査報告書」
VIET STOCK, “Seafood Product Preparation and Packaging”
Vietnam net, “Vietnam’s shrimp export expects to face difficulties this year”