世界有数のファストフードチェーンでありながらいつまで経っても日本に来ないジョリビーだが、新型コロナウイルスのパンデミックで、営業停止していたり、営業再開していても感染対策でコストが掛かっているなど前途多難である。
そんな中で伸びているのがテイクアウトやデリバリーだが、いっそのこと店内飲食スペースを廃止し、キッチンだけを用意してデリバリー(とテイクアウト)に特化しようというのが「クラウドキッチン」である。
ジョリビーフーズは、2019年3月にアラブ首長国連邦で最初のクラウドキッチンをオープンしていたが、コロナ渦により2020年6月にシカゴに、先日8月10日にはシンガポールと立て続けにクラウドキッチンをオープンしている。
シカゴには、クラウドキッチンの拠点を提供する企業キッチン・ユナイテッドがあり、ジョリビーはその設備を利用している。キッチンスペースに加えてウーバーイーツなど配送サービスに対応する場所、注文システムなどを提供している。シカゴでは店舗設備が限定的であるため、人気メニューに絞って展開しているようだ。
一方でシンガポールのクラウドキッチンについては、飲食スペースが無い事により「配送のハブ」だけを意識した住宅地での展開となっている。通常のレストランであれば、特にファストフードであれば人通りが多く利用しやすい場所という店舗展開になるが、デリバリーに特化しているならば、多くのオンライン注文を効率的にさばける場所に展開することが好手となる。
ジョリビーの店舗展開から見ても分かる通り、最近になってクラウドキッチンへの注目が集まっている。(同名のチェーン店を除き、デリバリー特化のキッチンという意味での)クラウドキッチンという用語は、少なくとも2015年まで遡る。
インドのスタートアップTwiglyが2015年11月にエンジェル投資家より20万ドルの資金調達をした時、使われていた用語がKitchen-On-Cloudであり、インドのエコノミックタイムズ紙がフードテックについて2016年8月に特集した段階では“cloud kitchen”と括弧付きである。Twiglyのビジネスモデルが明確にcloud kitchen modelと取り上げられたのが2016年11月である。
今のところクラウドキッチンという用語が主流というわけでもない。以下のGoogleトレンドを見ても分かる通り、寧ろこれまで主流だった用語はバーチャルキッチンやゴーストキッチンである。Wikipediaでの項目名もGhost kitchenであり、その中でもcloud kitchenという表記は数多ある表記の一つでしかないという扱いである。クラウドキッチンという用語が大きく注目され始めたのは割と最近であり、特に2020年3月以降の検索量の増加は著しい。