仮想通貨しか持たない人のための株式トークン化サービス

FTXに続いて、バイナンスも株式トークン化サービスを開始するようだ。初回はテスラ<TSLA>株が対象で、バイナンスのステーブルコインBUSDを使って取引できるようだ。FTXなどと同様に(日本で言う)単元未満株(バイナンスでは1/100ロット単位)で取引ができる。取引手数料はかからない。

参考:COINPOST「バイナンス、トークン化された株式取引サービスを開始へ 第一弾はテスラ」2021年4月12日

「4月12日時点で700ドルを超えるテスラ株を1/100単位で購入できるのが魅力」というコメントが散見されるが、恐らく多くの投資家にとっては「たったの700ドルで何を言っているのか」という感想が出てくるだろう。今のテスラ株を買うべきかはさて置き、700ドルをポートフォリオに入れるのが資金的に厳しいという投資家であれば、そもそも銘柄を幾つか選んで投資すべきではなく、おとなしくインデックスファンドを持っていた方が良い。

また、ステーブルコインであるBUSDが米ドルに連動しており、BUSDを使って取引できるという点についてだが、これも税制面での問題が考えられる。

日本人がBUSDを使ってテスラ株を購入し、再びBUSDに戻した場合、テスラ株の変動だけでなくドル円レートの変動も考慮しなければならない可能性がある。国税庁の見解に則れば、仮想通貨同士の交換は「一度仮想通貨(財)を販売して得た日本円を使って別の仮想通貨(財)を購入した」という扱いになるので、「BUSD→日本円→テスラ株トークン→円→BUSD」という取引が行われたという解釈がなされるのではないか。

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最終的な損益だけを計算するという方法も取り得るが、どちらにしても税計算が複雑な上、そもそも税制面で不利な点が多い。

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米国にも単元未満株取引ができる証券会社は増えているし、FTXのように24時間取引もできない(バイナンスの株式トークン取引は市場時間のみ)のなら、一体何の意味があるのか。

恐らく、「仮想通貨しか持たない投資家」の為に株式投資の機会を与えるという目的である。筆者からすればとんでもないことだと思うが、資産の殆ど全てを仮想通貨で運用している投資家が少なからず存在する。米国でも給付金をそのまま仮想通貨取引所に放り込んだ例が多々あるようだ。

そんな人にとっては「仮想通貨取引所が世界の全て」である。その世界にテスラ株など注目される銘柄の投資機会を入れるというのは、仮想通貨取引所の目線では大きな意味があるだろう。

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