米国の麻疹(はしか)についての重要な事実

米国では今、麻疹(はしか)が流行している。米国疾病管理予防センターによると、2019年は既に23州で839の症例を記録しており、2000年の「撲滅宣言」以来最大の規模である。以下はロイター通信がまとめた、米国の麻疹流行に対する重要な事実の要約である。

米国の麻疹発生について知っておくべきこと(REUTERS)

  • 「麻疹のワクチンが子供の自閉症を引き起こす」という誤った情報が拡がり、予防接種を受けさせない親が増えている(自閉症を引き起こすという情報は医学的に否定されている)
  • バージニア州ウィリアムズバーグでユダヤ教正統派コミュニティを中心に少なくとも466例、ニューヨークのロックランドで少なくとも224例が集団感染例(但し昨年の数値を含む)
  • カリフォルニア、ミシガン、ニュージャージー、ジョージア、メリーランドで集団感染が進行中
  • 伝染性が強く、子供の感染者1,000人当たり1~2人が死に至る
  • 難聴や知的障害をもたらす可能性があり、ワクチン未接種の幼児が最も危険
  • 2000年の「撲滅宣言」以降のワクチン未接種者のイスラエルとウクライナへの訪問が現在の流行の根源と考えられる
  • ニューヨークでは昨年10月から積極的なワクチン接種を進め、未接種の成人に罰金を科している
  • ワクチン未接種でも公立学校に通えるようにする法案を検討する州が増えている
  • 集団免疫を達成するには人口の90~95%の予防接種が必要

補足

非科学的な理由あるいは宗教的な理由でワクチンを拒否しようとする親が増えており、世界的にワクチンの未接種が問題となっている。

関連記事:ポピュリズムと宗教で拒否されるワクチン接種

そして最近はポピュリズムなど政治的な理由と結びつくことも多く、州レベルでは「予防接種を受けていないと公立学校に通えない(自宅学習となる)」という規定を排除しようとする動きが増えつつある。

既にカリフォルニア州、ミシシッピ州、ウェストバージニア州が「医学的除外」を禁じており、オレゴン州、ニュージャージー州、ニューヨーク州、アイオワ州、バーモント州、およびミネソタ州 で予防接種の義務を排除する法案が検討されている。

集団感染のルートから見て、イスラエルなどへの訪問に遡れ、かつユダヤ教正統派で集団感染が発生していることを見れば、宗教的理由も多いとみられる。

「自分は予防接種を受けていなくても病気にならなかった」というのは「他の人が予防接種を受けていることにタダ乗りしている」だけで、その集団免疫が働くには9割以上の予防接種率が必要である。

今後、爆発的に米国で麻疹が発生する危険性があるので、注意したい。

米国における麻疹の発症例(2019年5月10日現在)
出典:Reuters Graphic

参考文献

Reuters, “What you need to know about the U.S. measles outbreak”, 13 May 2019

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