肉食原料主義者の論考を見ればマクドナルドが植物肉バーガー導入に慎重になる理由が分かる

米国の非営利組織Reducetarian Foundationの共同創設者兼代表であるブライアン・ケイトマン氏が、米国マクドナルドで植物性由来肉を利用したハンバーガーを展開するべき理由について論じている。

reducetarianとは「肉食減量主義者(リデュースタリアン)」のことで、ビーガンのような「徹底した菜食主義者」ではなく、「環境保護などのために肉食を減らしていこう」とする立場である。大義があるという意味ではタコベルのターゲットである準菜食主義者(フレキシタリアン)とは異なる。フレキシタリアンとビーガンの間のような立場と筆者は理解している。

関連記事:ターゲットはビーガンから健康志向者へ:タコベル

一方で、マクドナルドは欧州では一部植物性由来肉によるハンバーガーを試験導入しているが、本部の米国では慎重である。このことをケイトマン氏は「遅れている」とし、以下のような理由から「導入しない理由が無い」と断じている。

  • 22万人以上の人が米国全土で植物性バーガーの導入を請願している
  • 米国の3人に1人が自分自身を準菜食主義者(フレキシタリアン)とみなしている
  • 高級店からスーパーマーケットまで数多くの場所でBeyond BurgerやImpossible Burgerの製品が提供されている
  • 世界の植物性由来肉と売上高は、加工肉の2倍のスピードで成長している
  • 競合他社の殆どがビーガン向けバーガーを提供している
  • 既存店の成長が鈍化しているバーガーキングで、植物性バーガーを試験導入したセントルイスではフットトラフィックが全国平均を18.5%上回った
  • 欧州のマクドナルドでは試験導入されている(米国で導入しないのが不可解)
  • チキンマックナゲットやフィレオフィッシュなど過去に起死回生の策として行ってきた事に比べれば遥かに低コスト

なるほど、個々の理由はよく分かる。しかし、典型的な「理由を列挙するだけでロジックが無い」という内容であった。

他社が既に実験しており、一定の成果を出しているのはマクドナルドも当然把握しており、それでも導入に慎重なのはKFCと同様に「導入しても新規顧客が増えるか定かではない」からだ。

関連記事:KFCは植物由来人工肉の導入に慎重な姿勢

現時点で実験することはそう大きなコストにはならないが、今は「植物性由来肉バブル」である。バーガーキングが4月に行ったフットトラフィック実験(アプリのGPSから歩行者の交通量を収集して分析すること)では、全国平均で3月から1.75%減少しているのに対し、セントルイスだけそれだけ好調であるのは、「流行」に乗っている客が多いことが示唆される。

筆者として発売されれば一度は食べてみたいと思う。しかし、それが継続するかはまた別問題である。従来の植物肉に比べて味がかなり良くなったとは言え、現時点では非常にハイコストであり、一部の人しか継続できないと考えられる。

また、過去のマクドナルドの戦略を出した理由も繋がりが分かりにくい。

1970年代に心疾患が多発した際に米国政府が牛肉食の軽減して鶏肉と魚を推奨してマクドナルドの売上高が落ち込んだ時に、Tyson Foodsの協力でチキンマックナゲットを開発した。

シンシナティでマクドナルドのフランチャイズ契約をしていたLou Groen氏は、競合他社がオヒョウ(大型の海水魚)を提供する企業に客を取られ、クリスチャンが金曜日に赤身肉の代わりに魚を食べていたことをヒントに開発したフィレオフィッシュの例も挙げられている。

この2つの例は「マクドナルドが経営危機に瀕した時の起死回生の一手」として行われたものだ。こういう抜本的な商品開発に比べれば、植物肉バーガーは仕入れ商品が増えるだけで専用機材が増えるわけではないので、導入が低リスクだという。

しかし、逆に言えば今のマクドナルドは大きな経営問題を抱えているわけではなく、積極的に導入する理由が無いと言える。大企業であるからこそ「動きが遅い」という風に悪く解釈もできるが、現段階で試験導入しても全国展開して「継続できるか」の判断材料として乏しいというのも理解できる。

参考文献:Entrepeneur, “It’s Time for McDonald’s to Offer a Veggie Burger Nationwide”, 20 Jun 2019

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

HAL の記事一覧