そもそも宝くじは還元率が低く「投機」であるので投資家としては選択肢に入らないというのはさて置き、CNBCが数字選択式宝くじ(日本ならロト6など)について興味深い報道をしていた。
CNBCによると、ノースカロライナ州で土曜日に抽選が行われたCarolina Pick 4(4つの数字を選択する宝くじ)で、当選番号が0-0-0-0と全て同じ数字であることが明らかになった。そして、その当選者が2,000人以上存在し、合計780万ドルの当選金が支払われることになった。
当選確率が10,000分の1程度であり、一人頭で言えば40万円程度の賞金に過ぎないが、ここでは宝くじの規模よりも「それだけの人数が全て0を選択した」ということに注目したい。
特段断りや不正が無ければ、数字選択式宝くじの当選番号は「ランダム(に近い質の高い疑似乱数)」であり、全て同じ数値になる確率も、多くの人が選択する「任意のバラバラの数字の羅列」も確率は等しい。
「全て同じ数値になるはずがない」と決めつけて数値を選択するのは、実際には存在する可能性を捨象していることになる。そういう意味では、「全てが0」を選択できるというのは、確率を正確に評価できているという証拠になる。
実際、同宝くじでも全てが同じ数値のケースが2012年にも出ており(その時は1-1-1-1)、宝くじのルールとして特定の数値の組み合わせが排除されていないことが分かる。
一方で、CNBCが行った当選者でのインタビューでは「好んで同じ数値を選ぶ人」が出ており、同じ数値が並んだ状態を「特別視」している場合もあることが分かる。
何が言いたいかと言えば、この記事から示唆される投資家或いはギャンブラーが陥りやすい誤謬として、
- 暗黙のうちに特定の可能性を排除してしまうケース
- 暗黙のうちに特定のケースを特別視してしまうケース
の両方のパターンがあるということである。
前者は「当選番号が全て同じ数値になるわけない」と勝手に思ってしまうことを指し、投資においても知らず知らずのうちに捨象すべきではない可能性を排除しているケースは多くある。
後者は「ダウ平均株価が26,000ドルに到達」など特定の数値を特別視しすぎるケースなどが挙げられる。
26,000といえば「キリの良い数値」であり、報道としても分かりやすいし、物事を考える上でもシンプルで単純である。
しかし本来、平均株価であっても特定銘柄の株価であっても、「キリの良い数値」に本質的な意味は無いはずだ。
例えば、ある銘柄の目標株価が2,000円と示されていたとして、その背後にある特定の分析手法で得られた結果が2,000円ちょうどであるケースは少ない。実際には1,984円だったかもしれないが、大抵はキリが良い数値で公表される。その方が分かりやすいからだ。
平均株価でも同じだ。「26,000ドル台で売る」という方針は、実際にそれを採用する人が多いので「何らかの意味があるように見える」が本当は意味は無い。本当は25,998ドルで売るのが合理的かもしれないのだ。
「特定の人間にとって分かりやすい数値」というのは、「無視」の方向でも「特別視」の方向でもどちらでも間違いを犯しやすいので注意が必要である。