大阪駅での「仕掛け」は発想が面白いものの今一歩感

JR西日本と大阪大学大学院経済学研究科の「シカケラボ」が共同で、JR大阪駅で7月30日~8月5日まで「仕掛学」の実験を行うようだ。

参考:JR西日本「「仕掛け」で駅の人の流れを変える!JR西日本グループと大阪大学が、JR大阪駅で「仕掛学」の共同実験を実施 」2019年7月26日

仕掛学は、同研究科の松村真宏教授が主宰するシカケラボで扱う学問の名前で、人の行動を変える「仕掛け」を考えるものである。

参考:大阪大学シカケラボ

例えば、ゴミ箱の上にバスケットゴールを設置することで、人はゴミを「シュートによって捨てたくなり結果的にポイ捨てが減る」といったものだ。一種のメカニズムデザインと言え、一定の効果が出ているようだ。

JR大阪駅で行われる実験は、階段を半分に区切り、「アフター5に行くなどっち?」という質問に対し、「福島派」と「天満派」で分け、好きな方を通ってもらうという試みのようだ。(冒頭画像はプレスリリースによる実験イメージ)

プレスリリースによれば、「駅構内で混雑しやすく、問題発生の要因ともなるエスカレーター利用を減らし、階段利用を増やすことを目的」としている。

学生が考えたアイデアにツッコミを入れるのも野暮だが、試みとしては面白いものの「階段利用を増やす目的」としては問題が多いように見える。

まず、「改札からホームに向かって右に行く方向」に存在する階段で実験を行うという点だ。普通に考えれば最短距離の右側を通りたくなるのであり、一見効果的な「総選挙」に見えるが、右側に偏りそうに見える。

もっとも、実験の前段階において、階段の右側と左側をどれくらいの割合で通過されるかの統計を取った上で今回の実験を行うのであれば、その差異が選挙による効果と言えるだろう。

しかし、それでも「エスカレーター利用を減らす目的」としては疑問がある。階段で投票ができる程度では階段利用を促す動機付けとしては弱い。

エスカレーター利用を減らしたいのであれば、エスカレーターに乗りたくなくなるような質問をエスカレーターに設置する方が良いように思える。

例えば、エスカレーターに乗れば「前科がありますか? はい」という回答をしてしまうような質問であれば、エスカレーター利用を抑止する方向になるかもしれない。もっとマイルドに、健康を害するようなメッセージ(煙草のパッケージに書いてあるようなもの)を出しても良い。

これは仕掛学の趣旨からは少し外れるのかもしれないが、広くメカニズムデザインとして考えれば、こうしたものの方が効果的だろう。

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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