今月上旬、ベトナムの研究者が公開した論文で、ファーウェイ(Huawei)の少なくも3人の社員が中国軍と関係があり、ファーウェイで技術者として働きながら、国防科技大学で教鞭を執り、軍に雇用されているといった主張がされた。
参考:日本経済新聞「ファーウェイ、中国軍とつながり 疑惑相次ぐ 」2019年7月8日
元の論文はSSRNで全文無料で公開されている。
Balding, Christopher, Huawei Technologies’ Links to Chinese State Security Services (July 5, 2019). Available at SSRN: https://ssrn.com/abstract=3415726 or http://dx.doi.org/10.2139/ssrn.3415726
ここでは論文の内容よりも調査手法を掘り下げたい。
2018年に中国では、就職サイトから大量の履歴書(curriculum vitae : CVs)が漏洩した。漏洩といってもハッキングなどではなく、パスワードがかかっていない状態で誰でもダウンロードできるような状態で置かれていたという。少なくも6億件の履歴書が漏洩しているという。
研究者らは、その中から「Huawei」や「華為」といったキーワードやレコードの内容からファーウェイに関係する履歴書を抽出し、更に人民解放軍(PLA)などのキーワードで抽出することで、軍関係の仕事に在籍したことがあり、その後ファーウェイで働くに至った従業員を抽出した。
その上で、当該個人の調査やインタビューを行い、論文では特定できない形に情報を加工して紹介している。
論文では「軍と関係をもちながらファーウェイで働く従業員が存在すること」を発見しただけでなく、「ファーウェイが軍で働いていた人を多く募集していること」を発見したことも大きい。
募集して採用した人が「過去または現在の職が軍関係である」というのが偶然である確率は低いと論文では指摘されており、さんざん言われている「情報漏洩リスク」の疑念を掻き立てる疑惑として重要である。