菅官房長官は「観光戦略実行推進会議」でワーケーションを普及させて観光促進という考えを示した。
また、旅行や働き方の新しいスタイルとして、リゾート地や温泉地などで余暇を楽しみながら、テレワークで仕事をする『ワーケーション』や、そうした地域に企業の拠点を設置する『サテライトオフィス』を普及させるため、ホテルなどで仕事ができるようWi-Fiの整備の支援に取り組む考えを示しました。
NHK NEWS WEB「菅官房長官 「ワーケーション」普及で観光促進を」2020年7月27日
ワーケーション(work + vacation)は確かに米国などでは一般的な概念となってきている。例えば旅行のために働くミレニアル世代のリモートワーカーでも紹介したように、米国のミレニアル世代の働く理由(複数回答)のうち「旅行」を挙げた人は63%に達する。リモートワーカーに「1年間のうちどれくらいの期間、拠点外の街で旅行しながら働くか」と聞けば、30%近くの人が「年に1ヶ月以上旅行しながら働く」わけである。(出典:Buffer, “State of Remote Work 2019”)
しかし、これもあくまでも米国のリモートワーカーの話である。日本企業が多少リモートワークを導入したところで、ワーケーションを実施するにも限界がある。
例えば「週に1回は出勤しなければならない」とか「午後にハンコを付くために出社しなければならない」ような状態であれば、まともに旅行しながら働くことなんてできない。前者は週に6日はワーケーションが可能と思うかもしれないが、毎週会社近辺に戻って来なければならない状態であれば、移動が多くて大変である。ましてや突然ハンコをつくために出社を要求されるような会社であれば、優雅に旅行もできない。
そもそも筆者は3月に書いたようにそんな簡単にテレワークは普及しないというスタンスである。実際、一時は出勤が3割程度にまで減少していた日本だが、今や7割以上、地域によっては9割以上にまで戻ってきているわけだ。今再び「7割在宅ワーク」が呼びかけられているが、一部の大手企業がギリギリ達成可能な数値であり、大多数の企業には無理な状態である。
何度も言うように、テレワークを「やらざるを得ない状態」でやっている企業が多い以上、それは普及しないし、柔軟に旅行しながら働くなんて事が可能な労働者も生まれにくい。テレワークを「やった方が良い(生産性が高い)」といった状況にならなければ、そうした働き方は夢のまた夢である。