米国アントレプレナーへの意識調査 “THE MEGAPHONE OF MAIN STREET: STARTUPS FALL 2019”

アントレプレナー(起業家)と言っても英語圏的な意味では、シリコンバレーでのスタートアップだけでなく、個人事業主やギグ・エコノミーで生活するフリーランスなども全て英語的にはアントレプレナーである。

スモールビジネススタートアップを支援する非営利組織SCOREが、9,889人のアントレプレナー(回答者は1,141人)に調査を行い、”Megaphone of Main Street”というレポートを公表している。2019年秋版は「1年目に新興企業や個人事業主が直面する課題」に焦点が当てられている。

レポートは3部構成になっており、

  1. Finding Your Way, Finding Customers(起業の動機やモチベーション維持、顧客の獲得方法など)
  2. Finding Financing: Funding the Dream(資金調達の額や方法など)
  3. Finding the Right Team: Staffing and Labor Challenges(従業員の採用について)

でまとめられている。(カッコ内は大まかな内容)

ここでは1に絞って筆者が気になった内容に絞ってデータを紹介する。

起業の動機

以下は、事業を始めた主要な動機についての回答結果である。

回答結果は大きく3つに分けられるように思える。

  1. ビジネスで提供する価値への動機
  2. 自営業という形態自体の価値
  3. 非自発的な起業

1は、「自身が提供する製品・サービスへの情熱」や「市場のギャップを埋めたい」といったビジネスへの情熱によるものであり、合わせると半数を超える。

2は、「上司に指示されずに働く」や「自営業の柔軟性」といったサラリーマンではない自営業の働き方に対する価値が動機で、合わせると3割程度である。

一方で3に該当する「前職の失業・不完全就業」は14.6%に過ぎず、やむを得ず起業したという人は相対的に見れば少ないことが分かる。

実際、回答者は平均して業界での業務経験が11.5年あり、スキルや人脈などを作ってから創業するケースが多く、やむを得ずもしくは気まぐれに創業するケースは少ない。但し、これは静的な統計調査であり、生存バイアスが働いている可能性があるのには注意だ。

モチベーション・刺激の要因

次は、創業初年度で難局を迎えた時に、モチベーションの維持や刺激を受けるのに役立ったものは何かという設問の回答結果である。

「家族や友人のサポート」という回答が66.2%と最も多く、他にも「ビジネスメンター」(42.9%)や「パーソナルコーチ・カウンセラー」(30.3%)などビジネス面やメンタル面は別にして相談できる人がいることが役立ったと答える人が多い。米国では気軽にカウンセリングを受ける人が多いので、回答結果にもその傾向が現れている。

「自分が立てたビジネスプラン」(43.1%)が心の支えになるという人が2番目に多く、情熱を持ってビジネスを始めた人が多いことから考えても、事業計画自体が信念に結びついているようだ。

ちなみにIPO関連で何かと話題の「コワーキング・スペース」は6.0%に過ぎず、あまり刺激にはならないようだ。

顧客獲得戦略

最後に、事業の初年度に採用した顧客獲得戦略とそれで顧客を得られたかどうかについての回答結果である。

やはり職業に関連するネットワーク(「 個人や専門家ネットワークへの接触」や「公式の職業者集団」)での顧客獲得を目指す起業家は多く、成果も出やすいということが分かる。

ソーシャルメディアやSEOは手軽にできるのでやっている人は多いが、その割には効果が出ないということだろう。

実施した人は少ないが効果が高いものとして「イベントでの講演」がある。例えばITの勉強会や講演会といったもので話すことを指す。専門的な職業であれば、こうしたものが顧客獲得に効果があるというのは頷ける。

参考文献

SCORE, “The Megaphone of Main Street: Startups, Fall 2019”, 9 Sep 2019

       

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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