コロナ対策から分かる日本の組織的欠陥について

最近の現政権のコロナ対策はどれも具体性に欠け、ただただ状況に右往左往している感が否めない。

政府は企業に対して社員の7割を在宅ワークにすることを要請した一方で「Go To トラベルキャンペーン」を開始しており、かなりちぐはぐな状況である。

日常での感染者増加を抑えつつ、致命的とすら言える旅行業界の惨状を救うべく経済を回すという方針とも取れなくはない。

しかしながら、一般市民の私達から見るといまいち政府が目指しているものが何なのか分からない。

また、一連の流れの中で政府が各地方自治体を制御できている様子もなく、東京都や大阪府は独自に自粛基準やルールを設定している状況だ。

筆者は今回の政府のコロナ対策を見ていると、戦前の日本政府(特に日本軍)の意思決定のスタイルからあまり進歩しておらず、未だに日本の組織的欠陥を引きずっているように感じるのである。

失敗の本質 日本軍の組織論的研究』によると、太平洋戦争における日本軍の失敗要因として「戦争の目標があいまいであった」ことが挙げられている。

つまり、最終目標を定めず、目先の対応に追われることに終始してしまったということである。

太平洋戦争において言うと、真珠湾を攻撃したものの、その後どうしたいのか?について明確に定めていなかったのである。例えば、最終目標がアジア地域から欧米を追い出すことがなのか、アメリカ本土に上陸し占領することなのか等が具体的に策定されなかった。

一方で日露戦争で日本は勝利したが、こちらは最終目標として「ロシアの陸軍と海軍にある程度のダメージを与えた上で米国に仲裁してもらい講和を結ぶ」ことをきちんと想定しているのは非常に興味深い。そういう意味では日露戦争から太平洋戦争にかけて日本政府および軍の組織は退化したとも考えられる。

今回のコロナ事案では日本政府の対応はどうであろうか。

感染者拡大は防ぎたいものの、経済活動への被害も食い止めたいという相反する二つの目的の中で揺れ動き、最終目標を定め切れていない感がある。

それが、「在宅7割の企業への要請」と「Go To トラベルキャンペーン」の並行実施というちぐはぐな施策、つまり目先の対応に追われているように思えてしまう理由であると筆者は考えている。

また、このような場当たり的施策はコロナだけのことではなく、アベノミクスにも当てはまる。

アベノミクス自体、当時低迷していた株価への起爆剤になったことは評価できるものの、「出口戦略」については全く見えておらず、闇雲に事態の先送りをしている状態である。日本市場は海外機関投資家の思うように動かされている現状である。

これらは現政権の問題というよりは、日本が歴史的に抱えてきた組織論からみる欠陥である。

戦後、戦争に対して感情論的側面での反省ばかりを繰り返し、本質の理解を疎かにしてきたとも言える。

戦中時を知る方々も少なくなってきたこの現代において、コロナを契機に再度見直す機会ではなかろうか。

参考文献:戸部良一他(1984)『失敗の本質―日本軍の組織論的研究 』ダイヤモンド社

About YOUKI

SlofiAでは金融・財務分析関係を専門に執筆。元銀行出身。現在は上場企業の経理を担当。

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