そんな簡単にテレワークは普及しない

新型コロナウイルスによってアメリカではズームビデオコミュニケーションズ<NASDAQ: ZM>、日本ではブイキューブ<TSE: 2681>などウェブ会議サービスなどテレワーク関連銘柄に注目が集まっている。(後者は26日以来暴落しているが。)

日本でも政府がテレワークを「要請」するなどし、在宅勤務にしている大手企業は幾つか報道されている。会議など人とのやり取りであれば電話、メール、ウェブ会議などで可能だが、大多数の企業はテレワークができる状態になっていないし、簡単には普及しないだろう。

例えば大きなシステム開発であれば、大雑把に上流工程(要件定義や設計)を扱う大手システムインテグレータから、下流工程(開発やテスト)を行なうパートナー企業に分かれる。(本当は下流は細かく下請け構造になっているが、ここでは大雑把に上流と下流だけで考える。)

この時、上流工程であれば客先とのやり取りを中心にウェブ会議などが使える部分は少なくない。しかし、いざ要件定義書の作成やら見積り、設計という段階になると、会社の技術資産などを参照しなければならないケースがどんどん出てくる。この時、大手であるほど情報の持ち出しは難しくなり、セキュリティがネックとなって単純にリモートワークというわけにはいかなくなってくる

下流工程となると、VPNを使って外部からリモートで開発に入るといったケースは少なくない。しかし、下流にいけばいくほどみるべきドキュメントなどは増えてくる。何でもデータの持ち出しが可能なセキュリティ的にガバガバな企業は別として、そうでなければリモートでこうした技術資産やドキュメントを参照する必要が出てくる。

そうすると開発時のエディタやIDEの画面に加え、ドキュメントや画面遷移図を開き、検索するのにブラウザを開いて……となっていくと、すぐにディスプレイは3つも4つにも膨れ上がっていく。開発工程となると「スタバでMac開いてドヤ顔」というわけにはいかないのだ。実際にドヤ顔している人は書類作成や記事執筆など必要なウィンドウの数が比較的少ない業務が多いと思われる。(開発をしているエンジニアがいないとは言わないが、あまり生産性が高い仕事方法とは思えない。)

そうすると、企業がVPNを通じて会社の技術資産にアクセスできる体制を作った上で、自宅にマルチディスプレイを用意してという環境が必要になる。実際に開発を請け負う企業や従業員がそこまでの環境を整えるのはそう簡単ではないはずだ。

テレワークの実施が報道されるのは大手企業が多い。大手企業ならまだテレワークで可能な業務は比較的多い。それでも難しい業務は沢山ある。実態はどうか知らないが、電通は夜になっても明かりが煌々としているそうだ。

ましてや大多数の中小企業の従業員にとっては、テレワークでは難しい業務の方が多いはずだ。ITでさえこうなのだから、他の業種なら尚更だろう。

       

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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