何故インドは新型コロナウイルス感染者が少ないのか

人口や人口密度、医療体制の脆弱性の割にインドでは新型コロナウイルス感染者数が少ない。1月30日に武漢大学に通うインド人学生の感染がケーララ州で確認されてから1ヶ月以上が経ったが、感染者数は2020年3月4日時点で6人で抑えられている。武漢のインド人コミュニティも全体的に感染者数が少ないとして「カレーが有効」というデマが流れたほどだ。これらの背景には何があろうだろうか。

まず、インドハートケア財団代表で元インド医師会会長のK・K・アガワル氏はThe Economic Timesに対し、インドが相対的に新型コロナウイルスに対して安全なのは極度な高温多湿気候にあると指摘する。

エボラ出血熱、黄熱病、SARS、MERSなど被害が大きかった伝染病は幾つも存在するが、それらのいずれもインドでは殆ど影響を及ぼさなかった。一般にこうしたウイルスは高温多湿な気候に弱い。

The Economic Times, “India may have an innate, natural shield against coronavirus, after all”, 4 Mar 2020

これについては筆者も1週間ほど前に同様の事を指摘している。タイなど東南アジア諸国では新型コロナウイルスの感染は見られるものの、感染が爆発しているケースは少なく、医療体制の割に重症化例も少ない。これは現時点で30~32度くらいに達する気候によりウイルスがあまり活発でなく、人々の抵抗力が高いことが理由ではないか。

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筆者も上記事で今後東南アジアで尤も暑い暑季を迎えれば、35~40度くらいにまで達する過酷な暑さにより新型コロナウイルスの影響は収束するのではと見ている。

尤も、アガワル氏も完全に楽観的であるわけではない。インドは(1)極度に人口密度が高く、(2)人の移動も多く、(3)医療体制が脆弱であるので、一度感染が爆発すれば武漢のようになる可能性もあるとしている。

気候以外の理由としては、単に「医療体制の問題から殆ど検査されていない」という可能性もある。これだけの人口と人口密度があれば、既にある程度拡がっている可能性は否めない。しかし、ウイルスが弱い状況であるならば、拡がったところで症状が出ないか、或いは普通の風邪と変わらないので、特に問題は無い。

また別の理由としては自炊文化と手食文化というのも考えられる。インドでは自炊をする人が多く、外食は相対的に少ない。なので感染リスクが高い飲食店などに出入りする人が少ないというのは一つの理由として考えられる。

また、手食文化なので食事前に手洗いをする習慣があるというのも重要だろう。感染予防にはマスクなどよりも手洗いが遥かに効果的である。(武漢のインド人コミュニティでも感染が少ない理由として手洗いを挙げている人もいた。)トイレに行って手を洗うイタリア人が57%しかいないのとは対照的である。

そうした意味で東南アジアだけでなく、インドの気温や感染者数なども注視することは重要だろう。そうすることで日本の収束時期などにある程度目星がつくようになるかもしれない。

       

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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