母親の5人に1人が妊娠糖尿病になるシンガポールの現状

シンガポール保健省の主任科学者タン・チョウチュアン氏はThe StraitsTimesの講演で、糖尿病予防の対策は妊娠中から始めるのが良いと語った。

参考文献:The Straits Times, “Never too early – or late – to start preventing diabetes”, 28 Nov 2020

東南アジア全般でそうだが、一人当たりの砂糖消費量が多く、糖尿病患者の多さが問題になっている。シンガポールも昨年から砂糖入り飲料の広告規制を進めている。

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中でも妊娠糖尿病のリスクが高く、シンガポールでは母親の5人に1人が妊娠糖尿病に罹患しているとされる。

日本糖尿病学会によれば、妊娠糖尿病は妊娠中に見られる糖代謝異常であり、分娩後に正常化することが多いものの、将来は糖尿病を発症するリスクが高い病気とされる。

妊娠糖尿病:妊娠中に初めて発見または発症した糖代謝異常で,(……)成因論的には,1 型,2 型糖尿病と共通の発症機序が基底にあり,妊娠を契機に糖代謝異常が顕在化するものが多いと推定される.(……)妊娠自体が糖代謝悪化のきっかけになること,妊娠中は比較的軽い糖代謝異常でも母児に大きな影響を及ぼしやすいため,その診断,管理には非妊娠時とは違う特別の配慮が必要であること,妊娠中の糖代謝異常は分娩後にしばしば正常化すること,しかし妊娠中に糖代謝異常を来したも

のでは将来糖尿病を発症する危険が大きいこと,などのためである.

日本糖尿病学会(2012)「糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告(国際標準化対応版)」

タン氏によれば、妊娠糖尿病の発症は母親自身の将来の糖尿病リスクの上昇だけでなく、子供の将来の糖尿病リスクも高くなると指摘している。これは幼児期からの食生活が肥満リスクを高めるのが原因と考えられており、現在はその因果関係についての研究がシンガポールで進行中とのことだ。

いずれにせよ、糖尿病のような疾患の予防も若い時期から始めるのが重要とタン氏は指摘している。基礎疾患と新型コロナウイルスの重症化率の関係が指摘されるなど、今後ますます砂糖など特定の食材への風当たりは今後も厳しくなっていくと予想される。

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