従業員の持株制度を利用すべきか

上場企業を中心に、従業員が自社の株式を購入できる持株制度やそれを実行する持株会などがあるケースは少なくない。市場価格より割安で少しずつ積み立てる形式で株式を購入できる。インサイダー規制により売却は好きな時にというわけではないが、成長著しい企業などであれば検討する人も多いだろう。そうでなくとも、安定株主の増加や従業員のモチベーションアップなど企業側にとってのメリットも多いため、持株会に入るように定期的に求める企業も多い。

「成長著しい企業」である場合など、例外的な状況はあるものの、一般的には従業員が持株制度を利用するのはあまり良いとは思わない。それは売却時の問題よりも、「会社の従業員が持つリスク」が増幅されるからである。

働いている企業の業績がずっと良いのであれば何も問題は無いが、そういう企業は寧ろ少数派で、経済状況や業界の状況により業績が悪化する事がある。その場合、ボーナスなど、場合によってはリストラなどで収入に大きな悪影響を被るリスクがある。このリスクをどうヘッジするかが問題だが、残念ながら従業員持株制度の利用は、このリスクを増幅してしまう。

業績が良い時は株価が高くボーナスも多いが、業績が悪いとボーナスも減り株価も下がるからだ。投資の基本としてリスクヘッジを行うという観点においては、持株制度の利用は悪手ということになる。

こう言うと、ストックオプション制度を挙げる人がいるだろう。取締役など、経営に大きな影響を与える人間にストックオプションを付与することで、業績の向上や株価の上昇に寄与する動機づけになるからであり、制度利用者にとっても重要である。

しかし、一従業員の持株制度利用ということであれば話が違う。従業員一人が会社の業績に与える影響は微々たるものである。(モチベーションアップに繋げるために制度を利用する、ということであれば何も言わないが。)

いや、「私は業績に大きな影響を与える社員である」と反論する人もいるだろう。当然、そういう従業員も存在する事を知っている。しかし、そうした人は例外的であり、私からすれば何故雇われの身で甘んじているのだと思ってしまう。

そうしたわけで、基本的に持株制度の利用は企業側のメリットが多い一方で、従業員側はデメリットを上回るメリットが少ないというのが私見である。

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金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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