リモートワークの求人などを仲介する米国のflexjobsが、2019年7月に米国のミレニアル世代1,600人以上を対象に行った調査結果を公開した。調査では、リモートワークを行うミレニアル世代の動機や求職の傾向などに加え、X世代との比較も行われている。ミレニアル世代(またはY世代)は定義によって異なるが、概ね1980~1996年に生まれた人を指す。
ミレニアル世代の63%は旅行のために働く
以下は「働く理由」についての回答(複数回答)のうち上位4項目である。最も多いものこそ「生活必需品の購入」(83%)だが、2番目に「旅行」(63%)がきている。退職に備えた貯蓄(58%)や負債の支払い(51%)など生活や資金繰りの理由が多い中、旅行というのは異色である。「負債の支払い」が半数を超えるのはいかにもアメリカらしい。
旅行のために働くというのは「リモートワークなど柔軟な労働スタイルを確保することで旅行しながら働く」という意味合いが強い。「働いてお金を貯めて休暇に旅行する」だけではないことに注意だ。
同様の傾向はBufferによるリモートワーカーについての調査State of Remote Work 2019でも見られる。以下は同調査において、「1年間のうちどれくらいの期間、拠点外の街で旅行しながら働くか」という質問に対する回答結果である。
約半数(47%)は年に1週間~1ヶ月は旅行しながら働くというライフスタイルを取っている。3割近くはあまり若しくは全くこのような働き方をしないが、「1ヶ月以上」に該当する人も全体の28%に達する。
筆者はリモートワークではないが、割と日程の余裕のある出張を多く入れることで、休日はそこを拠点に旅行するといったことは多く、米国のリモートワーカーの気持ちはよく分かる。
ワークライフバランスの重視
旅行しながら仕事をするといった柔軟な働き方を求める人が多いことが分かるが、仕事にワークライフバランスを求める傾向は強い。OECD Better Life Indexでは米国のワークライフバランスは40ヶ国中29位と決して高くはないが、それだけにリモートワークを希望する人はかなり柔軟な働き方を求めている傾向が見られる。
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以下は最初のflexjobsの調査結果に戻り、「ミレニアル世代が働く可能性がある仕事を評価する時に重視する要因」についての複数回答結果である。これによると、ワークライフバランス(81%)が「給与」(79%)を上回る結果となっている。健康保険や401Kなど低福祉の米国らしい理由も並ぶが、いかにワークライフバランスが重視されているかがよく分かる。
柔軟性を求めるが故の柔軟性の無さ
一方でミレニアル世代は、働き方の柔軟性を求めるが故の柔軟性の無さも見受けられ、X世代に比べて企業にとっては扱いにくい側面もある。以下は、両世代についての比較結果である。
まず、上2つの結果より、X世代よりもミレニアル世代の方がよりリモートワークを重視する傾向が強いことが分かる。旅行の為に働く人も多い一方で、どちらかを犠牲にしなければならないとなれば、休暇を犠牲にすると回答する人が多い。
こうした結果より、柔軟な働き方について企業と交渉しても成功する確率はミレニアル世代の方が低い。これには、年齢や経験などでそもそも条件が異なるので、この違いが即ち「ミレニアル世代がワガママ」ということになるわけではないが、退職の検討の多さから見れば、柔軟性を重視するあまり損をしている人も多い可能性がある。
「オンラインで仕事を探して詐欺に合った人を知っている」と回答した人もミレニアル世代の方が多い。これについてはリテラシーの問題もあるが、そもそもオンラインで仕事を探す人の割合も影響しているだろう。但し、LinkedInやFacebookなどソーシャルメディアを求職に利用しないミレニアル世代も20%いるという。
参考文献
flexjobs, “25 Top-Rated Workplaces for Millennials to Find Remote Jobs”, 30 Sep 2019
Buffer, “State Of Remote Work 2019”