イスラム金融のロボアドバイザーが可能になった背景

パフォーマンスの良し悪しは別にして、ロボアドバイザーの名がつくサービスは増えてきている。従来型金融(コンベンショナル・ファイナンス)にあるサービスは、一部例外を除いて殆ど何らかの形でイスラム金融にも導入されていくものである。

ニューヨークに拠点を置くWahed Invest(ワヘド・インベスト)は先週、マレーシア証券委員会(SC)からロボアドバイザリーライセンスを付与されたことを発表した。

ワヘド・インベストは2015年に創業されたばかりの投資会社で、シャーリアに準拠したハラール金融に特化している。

参考:Wahed Invest

2017年にはシードラウンドのベンチャーキャピタル700万ドルを調達し、各国への展開を進めている。つい先日もアラブ首長国連邦の国際金融センターAbu Dhabi Global Market(アブダビ・グローバル・マーケット)が主宰するThe FinTech Abu Dhabi Awards 2019の”Islamic FinTech of the Year”を受賞している。

参考:FinTech Abu Dhabi Awards

ワヘド・インベストは、2016年からイスラム金融に特化したロボアドバイザーを運用しており、2018年にはハラール銘柄のモバイルスクリーナーの公開、2019年5月には世界130ヶ国への展開を発表している。

東南アジアにおけるイスラム金融の中心拠点と言えるマレーシアでのライセンス取得により、同社のサービスとニーズが合致するだけでなく、同地域での展開の足がかりになると捉えているようである。既にインドネシアの金融当局にアプローチをしており、同地域でのサービスのローカライズを進めているようだ。

イスラム金融におけるロボアドバイザーはまだまだ新しい取り組みであるが、こうした事が可能になった背景には、2016年のシャーリア策定によりイスラム金融で金(ゴールド)への投資が可能になったことが大きいだろう。

実際、ワヘド・インベストのポートフォリオを見てみると、

  • 先進国株式
  • 新興国株式
  • スクーク(イスラム債)

である。株式は当然シャーリア適格なものでなくてはならないので、選択肢は通常の株式投資家より少なくなる。(ギャンブル・酒・豚肉などを扱う事業、投機的な事業、利子から生まれる収益が多い事業などは認められない。)

現時点ではS&P/TOPIX 150シャリア指数などに個人で投資することは難しいので、個人投資家がハラール銘柄に分散投資するという観点においては、このロボアドバイザーの価値はあると思える。

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但し、ロボアドバイザーという性質を考えれば、それほどハイリスクなポートフォリオにすることは現実的に難しいと思われ、リスクヘッジが必要になる。しかし、イスラム金融においては多くのデリバティブ商品を運用することができないので、リスクヘッジに使えるものがスクーク(イスラム債)のみであった。

そこに加わったのが金であり、これによってイスラム金融におけるポートフォリオの柔軟性はかなり高まったと言える。同社が本格的にロボアドバイザー事業を拡大し始めたのが2017年ということを考えても、金解禁によるイスラム金融投資の更なる加熱に乗っかっただけでなく、運用の柔軟性自体も影響していると考えられる。

参考文献:Salaam Gateway, “Islamic robo-advisor Wahed Invest readies Malaysia launch with eye on Indonesia”, 24 Oct 2019

       

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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