ベトナムの水産物輸出は大きく減少しており、特に1~2月の中国向け輸出は32%減、バサ(養殖ナマズ)に限れば半減している。2019年のベトナムのナマズ輸出20億ドルのうち1/3に当たる6.6億ドルが中国向けであり、ベトナム水産物輸出生産者協会(VASEP)によれば、2~3月の注文は7割減である。
昨年はそもそもナマズの供給過剰による価格低下により、水産企業株は軟調であった。2018年にナマズ価格がピークに達した事でナマズ養殖場が大幅に増加し、価格が急落したためだ。例えば過去1年間の価格チャートを見ても、エビ輸出が中心のCamimex Group JSC(HOSE: CMX)は、反ダンピング税の廃止で一時急騰したものの、ナマズ輸出が中心のVinh Hoan Corporation(HOSE: VHC)とCuu Long Fish Joint Stock Company(HOSE: ACL)は軟調な状態が続く。
そして更に新型コロナウイルスに伴う中国向け輸出の減少、続いて3月からは同様に欧米向けの輸出が減少する形で、株価下落は止まらない。Vietnam Netによると、メコンデルタ地帯におけるナマズの卸売価格は20,000~21,000ドン(0.85~0.9ドル)であるが、平均的な生産コスト30,000ドンを大きく下回る。遊休状態の養殖場が多く、今の所下げ止まる気配が無い。
但し、輸出先の多角化やTPPなどで中長期的に輸出が増加し、価格が上昇するという期待は大きい。しばらくは軟調な状態が続くと思われ、新型コロナウイルスの新規感染者数がピークアウトするなど市場の底打ちが意識される頃まで大きく反発する可能性は低い。
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一方で、長期的には中国向け輸出の増加を期待する声が大きい。これは新型コロナウイルスでコウモリやセンザンコウといった食文化が影響したと考えられていることから、中国政府はこの種の野生動物の流通を規制しようとしており、その効果は限定的であるにせよ、安全な水産物需要は確実に増えるだろうという予測があるからだ。これは中長期的な需要増に寄与する要因ではあるが、一方で更に中国依存を強めかねない事象であり、リスクでもあるだろう。
参考文献:Vietnam Net, “Catfish farming in danger, farmers leave ponds idle”, 31 Mar 2020