新規感染者数ピークアウト底打ち説を過信してはいけない

株価の二番底は新型コロナウイルスの新規感染者数のピークアウトであるという味方が強い。これはSARSの時がそうだったからだ。新規感染者数がピークアウトし、ワクチン開発に目処が立てば、当面の懸念材料が失われるからだ。(その後に訪れる深刻な不況についてはまた別問題である。)しかし、今回に関してはそれを鵜呑みにするのは危険である。

まず、新規感染者数ピークアウト底打ち説があまりにも知れ渡っているからだ。相場が不安定な中、安値で買いたいと思う投資家は多いだろうが、この情報を鵜呑みにして安易に買いに走ると、それを狩られる危険性がある。ピークアウトは参考にすべき情報ではあるが、盲目的に買いに走ると痛い目に遭うかもしれない。

様々なシミュレーションモデルが登場し、ピークアウトを予測しようとする動きも投資家の中でも多く出ており、SARSの時のように単純に相場が動くとは限らないのである。

次に、たとえピークアウトによって株価が二番底をつけたとしても、パンデミックとなり、世界各地でロックダウンが行われている今回はまた状況が異なる。

多くの論者が取り上げているインペリアルレポートによるシミュレーションでは、下図の通り何もしない場合(黒)のシナリオは、集中治療室のベッドキャパシティ(赤)を大きく超えて医療崩壊を起こす。一方で隔離・自宅待機・社会的距離を施したケース(オレンジ)、学校閉鎖・隔離・社会的距離のケース(緑)は最初の感染爆発はある程度抑えられるが、その後に再発する形となっている。

ロックダウンの効果についてのシミュレーション結果
出典:Imperial College COVID-19 Response Team(PDF注意)

実際、武漢やシンガポールなど強力な都市封鎖で抑え込まれたように見えた都市でも、再発してきている。これはウイルスが想像以上に長期に渡って体内に残るという報告から考えると、それだけ感染力が強く、ある程度集団免疫ができるまで感染爆発が続くことになりかねない。

そうすると、新規感染者数ピークアウト底打ち説の信憑性が薄れてくる上、もし二番底となたったとしても、再度新規感染者数が増えれば三番底を目指す展開になるかもしれない。

ロックダウンを解除すると再び欧米諸国の新規感染者数が大幅に増えていく展開となれば、もはや底打ちの材料は有効なワクチンの開発しか無くなる。有力なものは幾つかあるが、治験や認可のプロセスまでを考えれば、それはすぐには訪れないだろう。

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金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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