米国は日本やEUからの自動車や自動車部品の輸入関税の判断を6ヶ月延期することを正式に延期した。
参考:ロイター「米、自動車関税の判断延期 メーカー「検討続行強く懸念」」2019年5月17日
モルガン・スタンレーなどは日本や欧州の株価は毛嫌いされているとした上で、輸入関税の延期をきっかけに、日経平均株価に対するTOPIXの相対的なパフォーマンスの低さや、企業収益の見通しなどから2020年6月までにTOPIXは上昇するという強気な姿勢を示している。
参考:CNBC, “Morgan Stanley is bullish on Japan, says its stocks are ‘oversold and unloved’”, 16 May 2019
そんな中、Consumer Choice Centerの副所長ヤエル・オソースキー氏は、関税の6ヶ月延期は新たな貿易戦争を生むかもしれないという警告を発している。
参考:Value Walk, “Trump’s 6-Month Window To Limit Car Imports Might Lead To A New Trade War”, 18 May 2019
この警告の前提となるのが、延期という行為自体が「協調的な解決を図らない、というトランプ大統領の意図を示している」という解釈である。
そうすると問題となるのが日本とEUの対応である。オソースキー氏は、「日本とEUが米国市場への自動車部品の供給を制限した場合、結果的に米国の消費者はより多くのコストを負担する」という形になると危惧している。
ポイントは日本やEUの自動車の供給の問題だけでなく、米国の自動車会社も日本や米国の部品を多く利用しており、生産や販売に悪影響を与えるという視点である。
オソースキー氏は、トランプ大統領の今回の決定がこの「新たな貿易戦争」を引き起こし、国際協力を妨げる可能性が高いとしている。
日本の政治の対応の甘さを知っている日本人としては、かなり悲観的な見方に見える。しかし、それだけ外交は戦略的かつ厳格的に行動することを前提とする、という当然(だが日本では忘れられがち)の視点が見えてくる。
現時点ではマーケットは関税延期を好意的に受け止めているので、その流れに乗った方がベターだと思うが、中長期的な視点としては頭の片隅に入れておくべきだろう。