エコノミストのBilal Hafeez氏は2019年1月までの米国の資本フローについて興味深いデータを示している。
米国株式市場は外国人の売り越しが続く
下図は、S&P 500(灰色)と外国人投資家による米国株式市場での買い越し・売り越し量の推移を示している。外国人投資家は9ヶ月連続で米国株式の売り越しており、2019年1月の売却は2015年以来最大であったことが分かる。
2018年末の大幅下落とはうって変わって、2019年に入って株高が続いていた米国株式市場だが、外国人投資家は2019年に入っても売り越しを続けており、リスク回避の姿勢が強いことが分かる。
米国投資家は未だ海外資産を売り続けている
一方で、米国投資家は外国資産を売り続けている傾向が分かる。下図は、米国投資家による外国株式(灰色)と外国債券(赤色)の買い越し・売り越し量を示している。こちらは債券を中心に売り越しが続いており、株式も2018年後半から売り越しに転じ、2019年1月になってもその傾向は変わらない。
考察
これら2つの事象それぞれに関してBilal Hafeez氏は、
- 外国人投資家は2008年以前と異なり、主に金利を通して米国の成長を判断している
- 米国投資家は新興国投資に回帰するに足りる材料を見つけていない
という可能性を指摘している。
CNBC Global CFO Surveyで見た、米国企業が他国企業よりも米国経済に対して楽観的という傾向とも一致しているのだが、米国株式市場を米国投資家だけが盛り上げている理由は何だろうか。
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これに関して筆者は、やはり米国のマーケットでは株高を重視するトランプ大統領の再選を前提として動いており、景気後退リスクなどを意図的に無視しているのではないかと考えている。(情報の非対称性があるとは言え、外国人投資家だけが金利を重視する理由はそれほど多く無いだろう。)
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同じ理由で、米国投資家だけが新興国投資の材料を見つけられていないというのも考えにくい。慈済、Bloombergなどでも報じられたように、2019年1月の上海A株・深センA株の外国人投資家による買い越しは520億元(78億ドル)と記録的な流入を記録し、(中国から見て)数多いる外国人投資家の中で米国投資家だけが中国投資の旨味を見つけていないというのも考えにくい。
要するに、素直に米国投資家だけが米国株式市場を過剰評価しているという見方は疑問で、政治的な観点が以前よりも重要になってきているというのが筆者の見方だ。
参考文献
ZeroHedge, “Foreigners Dislike US Stocks, US Investors Dislike Foreign Bonds”
Bloomberg, “These Are the Chinese Stocks Topping Foreigners’ Shopping Lists”