今年はシンガポールでデング熱が過去に例が無いレベルで猛威を奮っている。新型コロナウイルス対策のロックダウンにより蚊が増殖し、経済活動再開に伴って刺されているからだ。
デング熱対策として有望なものの一つにボルバキア菌に感染した蚊を放つという方法がある。ボルバキア菌に感染したオスの蚊は生殖能力を持たず、感染したメスは吸血しないので、これらの蚊を放流することで既存の蚊を減らすことができると考えられるからだ。(一般にオスの蚊を放流する方法が取られる。)
シンガポールは蚊を湧かせている企業や家庭に対する取り締まり(罰金増額)を強めているが、そうした発生源に対する取り組みだけでなく、デング熱を媒介する蚊そのものを減らそうという形で、2022年までにイーシュンとタンピネス全てをカバーする計画が発表された。
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既にマレーシアなど世界各国で実証実験が進んでおり、一定の効果が得られているが、ここまで大規模なプロジェクトはシンガポールが初めてとなる。
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イーシュンでは7月27日から、タンピネスでは8月11日から蚊の放流が始まり、2022年3月までに2つの街が完全にカバーされる計画である。これは公団住宅(HDB)地区の15%をカバー広さである。
但しNEAは、あくまでもボルバキア菌に感染した蚊の放流は、既存の方法(蚊の監視、発生源の削減、駆除)を補完するものであって特効薬ではないと強調している。