ギャラップ社が2019年4月17~30日に米国で行った「属性別大統領選挙投票意向」についての電話世論調査の結果を公開した。全50州とコロンビア特別区に住む18歳以上の1,024人の無作為抽出により行われた。
この調査は「もし支持政党が特定の属性を持つ大統領選挙候補者を立てたとすれば、その人に投票するか」(人種や宗教、年齢など)というものである。(複数回答可)同様の調査が4年に一度、大統領選挙の前年に行われており、以下の全体結果は2015年との比較データを引用したものである。(単位は%)
2015 | 2019 | 変化率 | |
黒色人種 | 92 | 96 | 4 |
カトリック教徒 | 93 | 95 | 2 |
ヒスパニック | 91 | 95 | 4 |
女性 | 92 | 94 | 2 |
ユダヤ系 | 91 | 93 | 2 |
福音派 | 73 | 80 | 7 |
ゲイまたはレズビアン | 74 | 76 | 2 |
40歳未満 | — | 71 | — |
ムスリム | 60 | 66 | 6 |
70歳以上 | — | 63 | — |
無神論者 | 58 | 60 | 2 |
社会主義者 | 47 | 47 | 0 |
黒色人種やカトリック教徒、ヒスパニック、女性、ユダヤ系などは非常に高い投票意向が示されており、これは支持政党別に見てもいずれも90%を超える高い割合である。
一方で社会主義者は前回と同じ47%と低い割合である。支持政党別に見ると、民主党支持者は49%が「投票したい」と回答しているが、共和党員は19%のみであり、最近の民主党の一部では盛り上がっているAOC現象に見られるような温度差と一致する。
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そんな中、オバマ政権時代の副大統領を務めたジョー・バイデン氏が民主党の候補者として正式に名乗りを挙げたが、懸念事項は彼の76歳という「年齢」である。そこで今回から年齢に対する項目が作られたが、「70歳以上」は63%とムスリムや無神論者と並んで低い値である。
過去の世論調査から見て特徴的と言えるのは「宗教的バックグラウンド」に対する寛容性が高くなっているということだ。以下は、「ユダヤ系(Jewish)」「キリスト教福音派(Evangelical Christian)」「ムスリム(Muslim)」「Atheist(Atheist)」に対する投票意向の推移を示している。
これらの宗教的属性に対する投票意向は増加傾向にあることが分かる。但しムスリムは最近の潮流として8年前から、福音派はトランプ大統領との関連から4年前から追加されたばかりである。
また、このグラフには示されていないが、同性愛者に対する寛容性も高まっており、2007年時点で55%だったものが、今回調査では76%まで上昇している。
但し、マイノリティに対する評価は支持政党別で見れば大きな差があり、特に差が大きいのは、
- 同性愛者(共和党支持者の61%に対し、民主党支持者は82%)
- ムスリム(共和党支持者の38%に対し、民主党支持者は73%)
- 無神論者(共和党支持者の42%に対し、民主党支持者は66%)
であり党派性は非常に強い。
今回の結果から見れば、やはり民主党の「社会主義者」の面々は非常に苦戦を強いられる可能性が高いと言え、ジョー・バイデン氏は有力であるとは言え「年齢」がネックになりそうである。
寧ろ「ヒスパニック」や「女性」などボリュームが大きい属性が有力と思える。一般的な「マイノリティ」は寛容性が高まってきているのは事実だが、ポリコレを考慮すると、世論調査の結果に全幅の信頼を置くのは危険だろう。
参考文献:GALLUP, “Less Than Half in U.S. Would Vote for a Socialist for President”, 9 May 2019