eコマースでの生鮮食品購入に抵抗感があるのは何故か

米国の市場調査会社eMarketer社の調査によると、米国におけるeコマース(オンライン販売)における食料品販売市場は、2019年は18.2%成長し200億ドル近くに達し、eコマースにおいて特に急成長している分野である。アマゾンが同部門で最もシェアが高く32.7%を占め、ウォルマートなど既存の大手小売もオンライン販売に力を入れて追随する形である。

しかし、eコマースでの食料品販売(飲料含む)は、食料品市場全体においてはわずか2%にとどまり、依然として98%は実店舗で購入される。

多くの顧客にとってオンラインで購入する際に抵抗があるのが「生鮮食品」である。eMarketer社が2019年8月に行った別調査によると、オンラインでの食料品を購入する際、腐りやすい物よりも腐りにくい物を購入する傾向が強いことが分かっている。

下表は、過去1ヶ月間にオンラインで食料品を購入したと回答した18-65歳の調査対象者の内、属性別に購入したものの割合を示している。

「腐りにくい物(スナック菓子や乾物)」を購入した人が84%に達するのに対し、「腐りやすい物<生肉や冷凍野菜など>」を購入した人は45%にとどまる。年齢別で見ると若年層の方が腐りやすい物を購入している割合は高いが、インターネットに慣れたミレニアル世代やZ世代であっても抵抗が強いことがよく分かる。

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その背景として考えられているのが「流通過程の懸念」である。以下はオンラインで生鮮食品を購入したことが無い人(74.2%)のうち、買わない理由として「生鮮食品の温度と新鮮さについて懸念を持っている人」割合を示している。

オンラインで生鮮食品を買わない理由として「温度や鮮度」など流通過程の懸念を持つ人は全体で55%で半数を超えている。実態としてロジスティクスに問題があるとは限らないが、そういう「イメージ」を持っている人が多いことがレポートでは指摘されている。

通常の店舗までのサプライチェーンは確立しており、製品も見て分かるので安心できるが、顧客の家までが流通過程に入ると、それだけ鮮度に問題が発生する可能性が高くなるというイメージである。

また、興味深いことに、流通過程についての懸念を持つ傾向は若年層の方が高い。では、高齢者は何を懸念しているのだろうか。送料など価格面での問題もあるだろうが、 高齢者特有とも思えない。

ここからは筆者の予想であるが、鮮度以外の製品固有の品質が分からないからではないか。「キャベツの芯の切り口は小さい方が良い」だとか「トマトは白い線が放射状に伸びている方が良い」だとか様々な見分け方を知っている人は高年齢者ほど多い。

eコマースで生鮮食品を購入する場合、恐らくは視覚的に分かるような品質にはばらつきが出ると思われる。 顧客全体に行き渡る平均的な「品質」は均質化されるだろうが、 「当たり外れが多い」というイメージを持ちやすいだろう。

いわゆる「外れ」はスーパーなどでは最後まで売れ残るようなものであり、店舗にとってはロスになるが、こうしたものも一定確率で混入してしまうオンライン販売においては、顧客の評価を押し下げることになりかねない。

参考文献[1]:eMarketer, “Grocery Ecommerce 2019”, 8 Apr 2019

参考文献[2]:eMarketer, “Consumers Remain Skeptical About Ordering Fresh and Frozen Food Online”, 22 Sep 2019

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金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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