ベトナムの飲酒運転厳罰化によるビール消費量減少は一過性のものか

2020年1月1日からベトナムでは、昨年6月に可決されたアルコール被害防止法の施行により、今年に入ってビールの売上が25%以上減少したと報じられている。新法では飲酒運転を一律禁止しており、血中アルコール濃度に応じて違反者には、自動車なら最大4,000万ドン(約18.8万円)、バイクなら最大800万ドン(約3.8万円)の罰金が科される。

特に影響を受けているのがハイネケン<EN: HEIA>で、同社は売上の約5%、税引前利益の約12%がベトナムからであり、21日には一時前日比5%値下がりするなど大きく値動きした。

この状況に対して悲観的な投資家も多いが、一方で旧正月(テト)における一過性のものだという見方もある。INGの生活必需品アナリストであるレジナルド・ワトソン氏は、ハイネケンにとってベトナムは非常に収益性も成長性も高い市場であるとした上で、新年の取締りを厳しく行っているだけで、平常時に戻るという見方をしている。(そうでなければ年後半の成長に大きな影響が出てくるとも言っている。)

Financial Times, “Heineken shares hit by Vietnam’s crackdown on drink-driving”, 22 Jan 2020

テトのお祭り騒ぎで酒量が増える人は多く、飲酒運転が横行しているので、1月は特に取締りが厳しいという見方には同意できる。

 全国では1月前半に322件の交通事故が発生し、249人が死亡、158人が負傷した。交通事故件数は前年比▲31件、死亡者数は同▲38人、負傷者は同▲57人減少となっている。

 交通警察局副局長のレ・スアン・ドゥック少将は、「例年テト(旧正月)の時期になると(忘年会などで)飲酒運転が原因の交通事故が多発していたが、今年は1月前半までは飲酒運転が原因の深刻な交通事故は発生していない」とコメントした。

ベトジョー「飲酒運転厳罰化、1月前半だけで6300人を摘発―罰金1億円」2020年1月20日

これは厳罰化で違反者が減っただけでなく、取締りの効果も出ていると見て良いだろう。

しかし、重要なのは交通違反の取締りを厳しくしていっているのは今に始まったことではないということだ。

ここ10年間でベトナムは取締りを強化し、人口10万人当たりの交通事故死亡者数は、2010年に24.7人だったのに対し、2018年は8.1人と1/3にまで減少している。その間、「運転免許取消は年平均34万人(日本は2018年で4.3万人)と8.5倍にも達する」のだ。

関連記事:減少するベトナムの交通事故死亡者数と厳格な交通警察

これは汚職防止などを含めてベトナムが海外からのイメージを高めるための手段の一つであり、アルコール被害防止法とテトというイベントだけで捉えるのは一面的な見方である。

しかも、アルコール被害防止法だけを見ても、飲酒運転の禁止だけでなく、

  • ゴールデンタイム(18:00-21:00)での酒類の宣伝禁止
  • 子供向け番組での酒類の宣伝禁止
  • 他者への酒類の強要の禁止
  • 18歳未満への酒類の販売の禁止
  • アルコール度数15%以上の酒類広告の禁止

など特に広告規制を厳しくするものであり、その長期的な影響は大きいと考えられる。

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それでも今後の人口増加と経済成長に伴いビール消費量が増えていくことには変わりがない。しかし、楽観的であるのもまた違うと言えるのだ。

       

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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