MICE(Meetings, Incentives, Conference and Exhibitions) の開催地として海外から人を誘致したい国は多い。国際会議などを通じて世界中から専門家やビジネスパーソンが集めることによる経済・文化の活性化を狙うもので、単純に観光客を集めるというのとは違った視点である。
また、MICEは単にビジネスや学術目的で集まるだけでなく、滞在中の観光も重要な要素である。「ついでに観光ができる」というのがポイントであり、MICEの誘致先としては「空港」「国際会議場」「観光地」が近いことが重要である。全てを空港内で完結させようとするシンガポールはその極致である。
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さて、タイは「バンコク」と「パタヤ」をMICEの誘致先として力を入れている。
先日6月10~14日まで5日間にわたり、タイ国際会議・展示会局(TCEB)はCLMV Media Familiarization Trip 2019を開催した。CLMVとはカンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムの4ヶ国のことである。このイベントは、成長著しい東南アジア各国からMICE旅行を誘致するための説明会である。
CLMVからタイへのMICE旅行者の数は、2018年は151,087人と前年比206%増で、数としてはまだまだ少ないが、急ペースで増えている。
TCEBは、都市の「継続的な発展と多様化」という意味でバンコクとパタヤを優れたMICE目的地として挙げており、バンコクエアウェイズと提携することで、4ヶ国からのMICE旅行者に対し、
- スワンナプーム国際空港(バンコク)での専用MICEレーンの利用
- 経済的なインセンティブ
- TCEB主催による文化公演
などのキャンペーンを発表した。
ここまででタイのMICE戦略は次の二点に要約できる。
- CLMVからの誘致
- 主要観光地(バンコク、パタヤ)への誘致
既に先進国ではタイは主要な観光地でありビジネスの舞台でもあり、今後ASEANの結びつきを進める中で、更に成長していくCLMVに特化するのは良い戦略であろう。
しかし、バンコクはともかくパタヤはあまり良い場所であるとは思えない。
パタヤは「バンコクから車で1時間半ほどで行けるビーチ」として観光客に人気のあるリゾート地である。(西洋人バックパッカーで溢れており、いわゆる「性産業」目的の観光客も多く、個人的には「通常のリゾート地」として行くことはオススメしない。)
単純にリゾート目的であればバンコクから1時間半というのはそれほど苦にならない距離であり、現地のリゾートホテルなどに滞在するのは観光ルートの定番でもある。
しかし、MICEとなると観光は国際会議などの「ついで」になるので、パタヤに空港が無い以上、空港から1時間半も離れているのはMICEの会場としては微妙な立地であろう。
筆者としては無難にバンコクをMICEの目的地として推進するのが良いと考えられるし、可能性も高いと思う。
参考文献:Vietnam+, “Thailand showcases MICE industry’s development”, 17 Jun 2019