ヘリウム不足は需要増加の結果ではない

先日10月1日にワシントンDCでGAWDA(ガス・ガス溶接業者協会)の2019年の年次総会が開催され、最近の深刻なヘリウム不足(Helium Shortage 3.0という名前がついている)について議論が行われた。

以前も当サイトで紹介したコーンブルース・ヘリウム・コンサルティング創設者フィル・コーンブルース氏も「カタールのでの供給停止を除き、最悪な事態を脱した」と講演で語っている。

基本的には以前BBCに語ったように「供給不足は2020年後半以降に緩和される見通し」を示しているが、講演ではもう少し具体的に、かつ供給面だけでなく需要面でも語っている。

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現時点では供給不足は10%程度であるが、それは専ら供給麺の問題であり、需要増加の結果ではないと強調している。ヘリウム需要はピークだった2011年よりも10%以上減少している。

その背景として、MRI産業でヘリウムのリサイクルが導入され、ガス溶接でも代替品が使われるようになってきていることを挙げている。5月にヘリウム不足について取り上げた際も指摘した通り、MRIでヘリウムを使うのは初期充填だけなので、ヘリウムを使う産業の中では影響を受けにくい。

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供給面でもアルジェリア(425 mmcf / 2020 Q3)、ロシア(700 mmcf / 2021 Q2)、カタール(425 mmcf / 2020 Q3)などのプロジェクトが供給増を後押しし、時期から見て分かる通り2020年後半から供給が増え始め、2021年のロシアの大型プロジェクトAmur Projectが「供給不足を終わらせる」という見方を示している。(mmcfは百万立法フィート)

2021年に米国のThe National Helium Reserveもヘリウムの民間競売を再開するので、この見方には筆者も同意である。

一方でコーンブルース氏は、米国のシェアが低くなり、ロシアなどのシェアが高まることにより政治的リスクは以前よりも高くなると指摘している。

また、供給不足緩和については現状は「2020年後半から2021年」という見方を示しているが、世界的な景気後退が発生すれば時期が早まる可能性もあると述べている。

参考文献:gasworld, “GAWDA Annual Convention recap part two: Helium shortage set to ease in 2020”, 2 Oct 2019

       

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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