日本では正規雇用と非正規雇用という分類が一般的なので、フォーマルセクター(公式経済)とインフォーマルセクター(非公式経済)という区分はあまり知られていないし、誤解されていることも多い。
インフォーマルセクターで働く労働者の雇用形態は日本語ではインフォーマル雇用と呼ばれている。これは「法制度や社会保障制度によって保護されない雇用形態」(THE POVERTIST)を意味する。
日本ではインフォーマル雇用と非正規雇用が混同されがちであるが、非正規労働者であっても労働法に基づいて働いており、社会保険に加入しているならばフォーマル雇用である。
発展途上国だとインフォーマルセクターにおける労働者が多く、それがSGDグローバル指標8.3でも、インフォーマル経済からフォーマル経済へのシフトが貧困対策目標として掲げられている。
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SGDグローバル指標では「農業以外におけるインフォーマル雇用の割合」が採用されている。日本では労働力調査における非農林業就業者に占める自営業主・家族従業者の割合が使われており、2018年で8.3%である。但し、これはインフォーマル雇用の一部であり、実態より低い値だと考えられている。
日本が過小評価されているのは置いておいても、世界的にはインフォーマル雇用が多数派である・直接は比較できないが、世界銀行がインフォーマル企業(未登録で統計的に補足できない企業)の割合を測定している。
地域 | インフォーマル企業の割合 |
東アジア&太平洋地域 | 51.0% |
欧州&中央アジア | 38.0% |
ラテンアメリカ&カリブ海 | 62.4% |
中東&北アメリカ | 40.9% |
南アジア | 41.1% |
サブサハラアフリカ | 66.7% |
世界平均 | 54.0% |
世界平均で54.0%と半数強、サブサハラアフリカに至っては66.7%と2/3を占める。
例えば先日もThe Conversationで議論の対象になった南アフリカについては、2019年Q2の失業率は29.0%(前年比+2%)となっているが、明らかにカウントされていないインフォーマル雇用が多いということが指摘されている。
本当に29.0%もの人が働いていないわけではなく、何からの形で働いている人が多い。日本ではあまり見かけないが、発展途上国に行けば、店舗を持たない行商などは多く見かける。こうした商行為からは所得税や消費税を取れていないので、公式統計にどこまで含めるべきかという議論が多くある。
一方でインフォーマル労働者も間接的に税金を払っているとも言われる。こうした国で流行っているのが「宝くじ」であり、東南アジアなどでも路上で売っている宝くじは非常に人気がある。
なにはともあれ、発展途上国の失業率をまともに受け取ってはいけないというのが一つ言えることである。
参考文献[1]:THE POVERTIST「開発途上国のインフォーマルセクター・経済・雇用に関する用語解説」2017年4月30日
参考文献[2]:WORLD BANK GROUP, “ENTERPRISE SURVEYS”
参考文献[3]:stats sa, “P0211 – Quarterly Labour Force Survey (QLFS), 2nd Quarter 2019”