ESG投資やイスラム金融投資のパフォーマンスについてはともかく、投資の世界にも社会的責任や政治的公平性といった考えを導入すべきという動きは強い。企業のCSRなどと同様に、投資ポートフォリオにこうした考え方に沿った金融商品を導入することは社会的なアピールになりうる。
HSBC Malaysiaが12日に発表した新しい金融商品は、ESGイスラム仕組商品(ESG Islamic structured product)というものだ。
ESGは何度か紹介しているように「環境」(Environment)・「社会」(Social)・「ガバナンス」(Governance)の頭文字であり、これらに配慮した投資がESG投資である。
イスラム仕組商品とは、従来型の金融(conventional finance)では「デリバティブ仕組商品」や「証券化商品」に該当するイスラム金融における金融商品だ。
発表された商品は、
- 3年満期と4年満期の2種類
- 最初の2年間は前者は年利3.9%、後者は年利4.5%
- 3年目・4年目はHang Seng Corporate Sustainability Indexのパフォーマンスの影響を受け、5.9%を上限として米ドル・リンギットの調整を受ける
- 満期保有による元本保証
という内容である。
年利と書いているがイスラム金融商品なので必ず商品を介し、クーポンでの支払いとなる。筆者の私見では、発売先のマレーシアは比較的シャリア適格の範囲が広いが、元本保証というのはイスラム金融の立場によってはシャリア適格にならない可能性がある。
それはさておき、金融商品の投資先がハンセン指数サステナビリティインデックスの影響を受けるということで、イスラム金融商品であり、かつ、投資先はESGに配慮しているというのが特徴だ。
まさに、キャラメルを食べていたら中からアーモンドが出てくるかのように「1粒で2度おいしい」(若い人には分からないかも)だろう。
HSBCはSDG(持続可能な開発目標)に力を入れており、2017年には本体が10億ドルのSGD債券を発行し、2018年10月にはHSBCマレーシアが世界初のSGDスクーク(SGDに対応したイスラム金融債券)の発行に成功している。
つまり今回のESGイスラム仕組商品は、SGD推進のポリシーに沿ったものであることが分かる。もっとも、原指数のハンセン指数の今後がどうだかは何とも言わない。とは言え、ESGとイスラム金融を組み合わせるというアイデアは興味深いと言えよう。
参考文献:Star Online, ” HSBC Malaysia launches ESG Islamic structured product”, 11 Jun 2019