ブルーボンドはグリーンボンドのような地位を築けるか

環境に優しい事業に資金を提供する債券であるグリーンボンド(環境債)は、2007年に欧州投資銀行(EIB)が発行してから10年あまり の歴史しか無いが、急速に普及していき、2018年時点で1,637億ドルと世界的に定着しつつあると言える。

日本でも遅れながら2017年3月には環境省が日本版のガイドラインを策定・公表し、少しずつ発行が増えてきている。つい先日も東京都が再生可能エネルギーの導入やLED化、島嶼海岸保全施設整備などに充てる個人向け都債「東京グリーンボンド」の条件を発表したり、東京電力も再生可能エネルギー発電事業のためのグリーンボンドの発行検討が報道されるなど、発行が進んでいる。

参考:環境ビジネスオンライン「東京都、個人向け都債「東京グリーンボンド(外貨)」の条件を発表」2019年10月30日

参考:ブルームバーグ「東京電力:グリーンボンド発行検討、再エネ発電会社が発行体に」2019年10月29日

そのグリーンボンドと似た債券にブルーボンドがある。これは環境環境の保全や持続可能な漁業プロジェクトの支援を目的とする金融商品で、2018年10月にセーシェル共和国が世界で初めて発行してからまだ1年しか経っていない。

参考:世界銀行「セーシェル、世界初のソブリン・ブルー・ボンドを発行 持続可能な海洋・漁業プロジェクトを支援」2018年10月29日

グリーンボンドが「環境」と範囲が幅広いのに対し、ブルーボンドは海洋関連のプロジェクトに特化しているという意味では、グリーンボンドの一部と捉えても良いだろう。

海洋関連のプロジェクトは気候変動に伴う海面上昇、二酸化炭素濃度上昇に伴う海洋酸性化、食料問題、沿岸部の環境などに対するプロジェクトが多く、島嶼国を中心に死活問題となっている分野でもある。

グリーンボンドやブルーボンドが注目される背景には、社会的責任投資やESG投資への注目が集まる中、これらを満たす代表例として分かりやすいというのが考えられる。更に公的部門としては、持続可能な開発目標(SDGs)の達成も重要であり、こうした事業は非常に公益性が高いことから今後も発行が増えると予想される。

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更にロンドン大学東陽アフリカ研究学院のマラム・アーメド特別研究員は、イスラム金融とSDGsの連携を強化する上で、イスラム金融のブルーボンドであるブルー・スクーク(スクークはイスラム債のこと)の発行が必要と主張している。

実際、HSBCがESGイスラム債を発行しているように、ハラールな事業とESGやSDGsの整合性は強く、イスラム金融側からブルーボンドを発行する動きが出てくる可能性は十分にあると考えられる。

一方で、グリーンボンドにしてもブルーボンドにしても課題は多くある。OECD上級政策分析官高田英樹氏はグリーンボンドについて、

  • 国際的に統一的な定義や規制が無い
  • 実際にグリーンプロジェクトに資金が充当され、環境改善効果を挙げているかのチェックや遵守を確保する仕組みが無い

といった問題を挙げている。

ブルーボンドについても同様の問題があると考えられ、まだまだこれからの分野であることは間違いない。

参考文献[1]:The National, “How Islamic finance can play a role in safeguarding our oceans”, 29 Oct 2019

参考文献[2]: 高田英樹「グリーン・ファイナンスの最前線(第2回)」『ファイナンス』平成29年9月号

       

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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