コロナで死ぬか飢餓で死ぬか

貧困層が多いインドでは、ロックダウンにより抗議運動が各地で多発している。更に5月3日までロックダウン延長が発表され、特に出稼ぎ労働者を中心に不満が募っている。インドなど開発途上国では、ロックダウンが行われたからと言って、十分な所得補償が行われているとは言い難く、特に貧困層は仕事が無くなるのは即死活問題となる。

当初は4月14日までのロックダウンを想定していた労働者が多く、帰省せずに手元資金で解除までやりくりすることを選んだ人も多かった。その予定が狂ったことで、十分な食糧を得られないことで、せめて地元までの移動を補助するように抗議運動が起こるなど、深刻な状況である。

フィリピンで「都市封鎖に抵抗するなら射殺する」というドゥトルテ大統領の強硬な脅しが話題になったが、それも都市封鎖で経済活動が止まると、それが生命の危機につながる人が多く存在するからである。

インドは恐らく暑さや自炊・手洗い習慣などから、ベトナムはベトナム戦争のせいでそもそも高齢者が少ないなどの理由で新型コロナウイルスによる死者が少ないが、逆にこうしたロックダウンが貧困を理由とした死者を増やしているのではないかという指摘がある。

フィリピンに至っては新型コロナウイルスの死亡率も高く、貧困も問題となり、抗議運動をしようにも射殺される恐れがあるなど、まさに「コロナで死ぬか飢餓で死ぬか」という凄まじい状況である。

もっと酷い状況なのはアフリカで、例えばケニアのナイロビではロックダウンを理由に貧困者向けに食糧が配給されているが、その量は十分ではなく、食糧の奪い合いなどが発生し、それを警察が催涙ガスなどで鎮圧するといった事態も発生している。

こうした事例は枚挙に暇がなく、開発途上国では、医療体制の問題により新型コロナウイルスが蔓延すれば疫学的に危険であるだけでなく、一方で封じ込めのために経済活動を止めれば、仕事を失った多数の貧困者が飢えかねない。そして、こうした状況が続けば抗議運動が発生し、場合によっては政情不安を起こしかねないので注視が必要である。

参考文献[1]:Al Jazeera, “Poverty punished as Philippines gets tough in virus pandemic”, Apr 2020

参考文献[2]:NEWS 18, “Impatient, Starving, Angry: As India Extends Lockdown, Stranded Migrant Workers Emerge as Crisis in Making”, 15 Apr 2020

参考文献[3]:Channel NewsAsia, “‘Starve or get sick’: Africa’s COVID-19 lockdown dilemma”, 15 Apr 2020

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金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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