ブロックチェーンを利用した食品追跡が持つ最大の壁

ヨーロッパを中心に農産物や食肉などの生産者追跡を行う仕組みが発達しており、消費者の意識の高まりもあって売上にも一定の成果が出ている。

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今のところ消費者が情報にアクセスする方法としてはQRコードが標準となっており、情報の保持としては改竄が困難なブロックチェーンに期待が寄せられている。

しかし、ベトナムでの状況を見ると、生産者追跡の最大の問題としての「人の作業」という点が浮かび上がってくる。

2018年初頭からハノイでは、QRコードを利用して店頭で食品の情報(生産地、農場所有者、生産者名、販売者名)を得られるシステムが稼働している。

運用開始から1年半以上が経った現在、236の企業が4,000を超える製品のQRコードを発行するに至っている。2020年には市内全ての生産者チェーンがコードを使用して食品追跡が可能になるという。また、小規模の生産者からの製品に付与されるQRコードの割合を30-50%にするという目標もある。

一見順調であるが、そうでない側面が指摘される。

ホアビン協同組合はこのシステムを採用した最初の協同組合の一つだが、わずか3ヶ月で利用を停止している。これには以下の2つの理由がある。

  • 正確な情報を入力するには通常の3-4倍の労力が必要
  • 試用期間中でも顧客10人当たり1-2人しかコードをスキャンしなかった

また、第三者機関による情報の検証や監督がなく、生産者から一方的に情報が来ることも問題点として指摘される。

情報を追跡するためには情報の入力が必要で、現時点ではその取組の殆どは手作業であり、それだけコストがかかり、また、データへの信頼性にも疑問があるという。手作業であればミスも発生するし、場合によっては悪意を持って虚偽の情報を入力する可能性も考えられる。

そもそもの情報を信頼できないのであれば、消費者がわざわざスーパーマーケットの店頭でスマホを取り出してQRコードを読み取るといった煩雑な作業を行うわけがない。

ホアビン協同組合の例では、顧客が物珍しく思うと考えられる試用期間中でさえ10人に1人や2人しか利用していないのである。

政府は将来的には国産品にはQRコードの義務化を検討しているが、やや先走り過ぎで、普及の為にはコストの問題を解決するとともに、労働者教育や消費者教育なども必要であろう。

これはベトナム国内の話であるが、先進国であっても同様の問題は付随する。たとえブロックチェーンを使おうとも、最初に虚偽情報が入力されてしまえば、その後の改竄が不可能であっても意味は無い。

ブロックチェーンの活用については様々なアイデアが挙げられているが、「最初は手作業」というのは意識しなければならないボトルネックと言えよう。

参考文献:Vietnam+, “QR codes fail to meet expectations”, 28 Aug 2019

       

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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