「小さな政府」や「政府の失敗」の解決策に一つとして、 公共事業の一部を民間資金を活用することが増えている。改正水道法で話題になったコンセッション方式はPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)の枠組みであり、 PFIの知名度は高くなってきている。
PFIに対し、いや厳密に言えばPFIも含む包括的な概念としてPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ:公民連携)という形式がある。政府が事業計画を作成して民間事業者の資金とノウハウを活用するのがPFIであるのに対し、特にPPPと表現した場合は計画段階から民間事業者が関与して公共サービスを提供することを指す。
PPPとPFIの枠組み
日本においてはPPPとPFIの枠組みは以下のように4つに類型化されている。
類型Ⅰは「公共施設等運営権制度を活用したPFI事業」で、前述の通りコンセッション事業が該当する。公共施設の事業計画を立て、民間に運営権を設定するものだ。
類型Ⅱは「収益施設の併設・活用など事業収入等で費用を回収するPPP/PFI事業」で収益型事業が該当する。収益型事業は更に「利用料金収入型」と「民間施設併設型」に分けられる。
前者は公営プールなど料金収入のある施設の運営に民間を利用してサービスの効率化を図るものでPFI色が強い。後者(スキーム図に該当)は公共施設に民間施設を併設したり関連事業を実施することで、事業の効率化や公費抑制を図るものであり、PPP色が強くなる。(内閣府「第2回優先的検討部会 資料1-4」)
類型Ⅲが「公的不動産の有効活用を図るPPP事業」で、単純にPPP(公民連携)といった時に指すことが多いものである。指定管理者制度などが該当する。
類型Ⅳは「その他のPPP/PFI事業」で、「サービス購入型PFI」と「包括的民間委託」に分けられる。前者は民間事業者のサービスを行政が購入して提供する形式である。サービス自体は民間のものだが、行政の計画と意思決定により実施されるのでPFI色が強い。
後者は複数の業務や施設を包括的に委託することである。例えば、従来は下水道処理施設と農業排水処理施設で別個の事業者に民間委託していたとして、両者の業務やノウハウは似ているので同じ業者にまとめて委託する事である。こちらはどちらかといえばPPP色が強い。
PPPへのソーシャルメディアの影響
前述の通り、日本ではPPPは指定管理者制度などが該当する。指定管理者制度といえば、旧約聖書の『出エジプト記』を「旅行」コーナーに分類するなど色々な意味で話題になったツタヤ図書館など、あまり良いイメージを持っていない人も多いだろう。
実は海外でもPPPが諸手を挙げて賛成というわけではなく、様々な問題が生じている。その一つに、世界銀行のジェフェリー・ガナム氏が指摘した「ソーシャルメディアの影響」という現代的な問題がある。
ガナム氏によると、PPPでは計画段階から民間事業者が深く関与するが故、政府広報ウェブサイト、コミュニケーションポータル、ソーシャルメディア、パブリックコメントなど様々なチャネルを通して広く国民・市民の意見を収集するという。
最近はソーシャルメディアの影響が強いので、誰もが潜在的なインフルエンサーになる可能性があり、戦略的にステークホルダーエンゲージメントとアウトリーチ計画を進めないと、間違った方向に世論誘導される可能性があるという指摘である。
タバコのマーケティングでナノインフルエンサーを利用した若年層獲得に使われるなど、ソーシャルメディアにおいては比較的小さなフォロワー数であっても使い方によっては大きな世論誘導・マーケティングに利用でき、そしてその世論誘導を特定することは難しい。
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こうした懸念もあり、日本ではまだまだ一部を除いてPFIが中心である。水道法においてはコンセッション方式が非常にネガティブに報道されたが、相対的に見ればまだまだ安全性が高いものとも言える。
参考文献
内閣府「第2回優先的検討部会_資料1-4」(PDF注意)
The World Bank Blog, “Everyone is a Potential Influencer: Effective PPP stakeholder engagement”