3月24日のダウ平均株価は2112.98ドル高の20,704.91ドルで終え、1933年以来の上昇率となる11%超えを記録した。新型コロナウイルス対策法案の通過を見越した動きであり、米国家経済会議(NEC)のカドロー委員長も、法案が成立すれば年後半のアメリカ経済は持ち直しに向けての準備が整うという考えを示した。トランプ大統領も、4月12日のイースター(復活祭)までには経済活動を再開させたいと考えている。
REUTERS「米経済、コロナ法案成立なら年後半に持ち直しも=カドロー委員長」2020年3月24日
REUTERS「米大統領、4月中旬までに経済活動再開を 「停止続けば国は崩壊」」2020年3月25日
しかし、些か楽観的やしないか。法案が成立すれば少なくとも3月末までは今の買い戻しの動きは続くだろうと考えている。4月以降に出てくる「えげつない経済指標」などもある程度は織り込まれており、もう少し続く可能性も否定はできない。それでも未だ肝心の新型コロナウイルスの感染者数がピークアウトしていない。
BNYアセットマネジメントのチーフエコノミストであるヴィンセント・ラインハルト氏は、市場が底打ちするためには「転倒しないように3本の脚」が必要だと指摘する。1つ目は金融政策、2つ目は財政政策で、1つ目は既に機能しており、2つ目も間もなく成立するだろうというのが大方の見方である。
それでも3つ目の新規感染者数のピークアウトはまだであり、少なくともプラトーの状態にならなければ乱高下を繰り返すのではないかというのがラインハルト氏の見方だ。
筆者も全くその通りと考えている。実際SARSの時も、ダウ平均株価こそ3月に底打ちしているが、日本や香港などでは感染者数がピークアウトした時が株価の底打ちであり楽観視はできない。むしろ感染者数はまだまだこれから増える。スマート体温計のデータによれば、若者がビーチではっちゃけているフロリダで異常に体温が高い兆候が出ており、感染リスクがあるのではないかという意見も出ている。
そして、仮に4月だか5月だか或いはもっと先かは知らないが新規感染者数がピークアウトしたとして、カドロー委員長のような楽観的な見方をするのは危険である。
確かに一旦底打ちする頃には、今度は大統領選シーズンが近づいており、トランプ大統領も様々な経済対策を打って出てくるだろうし、過去の米国大統領選イヤーかつ共和党政権時はバブル化しやすい傾向があるので、夏頃は潜在的なリスクを忘れて上昇トレンドになっている可能性はある。
しかし、それもせいぜい半値戻し程度(25,000ドル)であろう。そして忘れた頃にやってくるのが、その潜在的なリスクである。2度目のバブル崩壊は何によって起こるかでも指摘した通り、CLO市場のリスクは依然として高く、何らかのショックがあれば経済全体に波及して金融恐慌を起こす可能性が十分にある。
そのリスクが顕在化するのはすぐにではないが、頭のどこかに残しておくべきである。こうしたリスクは多くの投資家が忘れた時にやってくるものであるからだ。
この相場であまり大きなポジションを取るべきではないと思うが、投資するにしても逆張りせず、重要指標の前はポジションを落とし、土日はゆっくりと休めるような運用を行なうべきだと筆者は考えている。或いは原油株のような下値余地が小さい原油株や不況下に強い銘柄などを保有しておくといった運用である。