「新型コロナウイルスの感染力が低い」という嘘

春節に入り、多くの中国人観光客が世界中に出掛けることにより新型コロナウイルスが今後海外に更に拡がっていくという見方が強い。一方で、新型コロナウイルス(2019-nCoV)の感染力はSARS(重症急性呼吸器症候群)コロナウイルスよりも低いという見方も多く、政府や国連を中心に過剰に反応しないように呼び掛ける声は多い。

確かに過剰にパニックになるのは判断力を損ねることになりかねないので問題だ。しかし、感染者数や死亡率の増え方を新型コロナウイルスとSARSで比較すれば「感染力が低い」と判断してしまうのは危険である。

武漢では病院に人が殺到して検査入院ができない人もおり、中国の隠蔽体質を考えれば「本当の感染者数」は更に多いと考えるのが自然だ。

それはともかく、初症例から1月24日時点までの感染者数と死亡者数、死亡率を整理したのが以下の表である。それぞれ参照した時間が異なるので最終的な数値であることは保証しないが、概ねその増え方が把握できると思われる。

新型コロナウイルスの感染者数・死亡者数・死亡率の推移
出典:各報道より筆者作成

年末にWHOに報告された初症例は2019年12月8日のものであり、2020年1月24日時点で830人の感染者、26人の死亡者、死亡率で3.1%である。1月10日~1月17日は感染者数41人で変化がなかったが、1月18日に専門家グループにより「患者数が1,700人を超えている可能性がある」と指摘されて以降、明らかに感染者数が大幅に増えている。

ここで注目したいのは、

  • 初症例から1ヶ月半で中国での感染者数が800人を超える
  • 死亡率は少しずつ上昇している

ということである。死亡率が少しずつ上昇しているのは感染から発症、重症化と時間がかかるので自然である。なので死亡率は3%程度という情報から、SARSの9.6%に比べれば遥かに安全と判断してしまうのは時期尚早であるということだ。

実際、SARSの経過と比べてみよう。以下は初症例と考えられる2002年11月から終息宣言がされる2003年7月までの中国・香港・全世界の患者数・死亡者数・死亡率を示している。

SARSの感染者数・死亡者数・死亡率の推移
出典:海外法人医療基金より筆者作成

ここで注目したいのは、2002年11月16日~2003年2月28日までの3ヶ月半の間に792人、4ヶ月を過ぎた3月27日時点で806人、この時点の死亡率が4%前後であるという事実だ。つまりSARSウイルスの時よりも今回の新型コロナウイルスの方が800人に到達するまでの時間が遥かに短い上、当初は死亡率もそれほど変わらなかったということが分かる。

その後のSARSの経過を見れば、中国、香港、世界で見ても症例が増えていき、死亡者も増えていった結果、最終的な9.6%という致死率に落ち着いた。しかし、それでも中国本土の死亡率は6.5%程度と全世界に比べれば低い。

また、中国と香港を抜いた死亡率は12%であり、中国はその半分程度である。人口密度や(ハクビシンなど病気を媒介しやすい動物を食べる事による)ウイルスに対する耐性の違いなど、単純に比較できないが、それにしても中国本土での死亡率は異常に低く見える。

そう考えると、今回の3%の死亡率という数値もにわかには信じられず、またそれが正しいとしても今後の経過により死亡率が高くなってくる可能性は十分にあると言える。

       

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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