米国のメリアム・ウェブスター辞典は、2019年9月に530の新語を登録した。辞書として掲載されるくらいなので、既に使われるようになってから久しいものもあれば、新語・流行語らしいものから幅広い。
その中には性的少数者に配慮した単数としてのTheyといった人権に関係する言葉や、今やすっかり娯楽として定着したEscape room(脱出ゲーム)など様々である。ここでは、経済・経営・金融系に絞って新語・新用例を紹介する。
Haircut:資産価値の減少
「資産価値の減少」を意味する表現としてhaircut(散髪)が使われるケースが増えている。ウェブスター辞典では代表例として、2011年のギリシャ債務危機の際に「50%の債務削減の可能性」として“possibility of 50 percent haircut on debt”というロイター通信の表現を挙げている。
最近の用例ではWeWorkの評価額が大幅に減少する可能性が指摘された(実際にされた)ことに対して“WeWork might get a haircut”という表現が使われている。
いずれにしても「散髪」の語感からも分かるように「資産価値がばっさりとカットされる」という意味合いで使われる用例である。
Pain Point:悩みの種
直訳すれば「痛みの点」であるが、日本語としては「悩みの種」などと訳すのが適切だろう。
元々は「繰り返すトラブルや苦痛の原因」として使われているが、新用例としては「顧客に不都合を強いたり苛立たせたりする繰り返し発生する(製品やサービスの)問題」を指す。
参考:Merriam-Webster, “pain point”
経営やマーケティング関連での用例が多く、最近も広告についてのメディアAdAgeで“How to identity your audience’s biggest pain points”(視聴者の最大の悩みの種を特定する方法)という記事が掲載されている。
金融でも米国では個人向けの金融アドバイザー(Personal Financial Advisor)の仕事が拡がっているので、顧客の悩みの種としてpain pointsは頻繁に使われている。
Solopreneur:個人起業家(ソロプレナー)
soloとentrepreneurを合わせた単語で「個人起業家」を意味する。
参考:Merriam-Webster, “solopreneur”
英語では個人事業主も比較的規模が大きなスタートアップであっても全て起業家(アントレプレナー<entrepreneur>)である。
関連記事:米国アントレプレナーへの意識調査 “THE MEGAPHONE OF MAIN STREET: STARTUPS FALL 2019”
ウェブスター辞典によると、この言葉の用例自体は1992年からあるが、
- 起業コストが低下したことによる個人起業家の増加
- ギグ・エコノミーなどフリーランス経済の拡大
- (時期尚早と言えるが)3Dプリンターの登場に伴うメイカーズムーブメント
など多様な個人起業家が登場した状況において、単独か否かを区別して表現するケースが増えてきており、使われるケースが増えており、辞書に掲載されるに至っている。
参考文献
Merriam-Webster, “We Added New Words to the Dictionary for September 2019”, 17 Sep 2019