Live Paycheck to Paycheck

ニューヨークやロサンゼルスでは、新型コロナウイルスの感染拡大に対応するため、飲食店や映画館などを閉鎖する方針が示されている。特にニューヨークでは17日までに5万店以上のレストランが閉鎖される見通しで、その期間は明らかではなく、持ち帰りと宅配以外は営業されないようだ。

ロイター「米NYとLAの市長、レストラン・映画館などに閉鎖指示へ」2020年3月16日

こうした飲食店で働く従業員の多くが仕事を失うことになるが、多くの場合貯蓄は無く、給料の全てを使い切るような生活(live paycheck to paycheck)をしている。paycheckは「給料」の意で、「給料から給料へと(綱渡りの)生活をする」ということだ。

実際、米国の5人のうち2人は景気後退に備えられていない上、給料で給料を賄うどころかクレジットカード所有者の6割が医療費の負債を抱えているなど、こうした社会経済の危機的な状況に対して非常に脆弱な人が多い。

景気後退に備えているという5人のうち3人もあくまでも主観であり、実際にはその日暮らしの人はもっと多いという調査もある。CareerBuilderの調査では、米国の労働者の78%がlive paycheck to paycheckの状態であり、労働者の1/4以上が貯蓄をしておらず、3/4近くは借金があるという結果が出ている。これは低所得者に限らない話で、年収10万ドルを超える人でさえ1/10はその日暮らしだという。

今回の非常事態で仕事を失うと予想される飲食店などの労働者は、4月になれば途端にキャッシュが回らなくなると予想される。恐らく、4月になればフードスタンプ(SNAP)に人が殺到するだろう。

これは社会的にも問題であるだけでなく、政府としてもこうした人に対してどのようなサポートができるかというのは、大統領選を見据えた上での政権運営や選挙結果などに影響してくるだろう。

自己責任と片付けるのは容易いが、新型コロナウイルスによるレストランの閉鎖で仕事を失ったのは労働者の責任ではなく、この対応による世論の変化に注意すべきだろう。

2020年3月18日追記:ムニューシン財務長官は、米国民に小切手を直接送るなどの施策を検討していると述べた。これは一時的ながらユニバーサルベーシックインカム(UBI)と呼べるものであり、上記の「その日暮らし」とその背後に横たわるクレジットカード負債などの問題に直接的に働きかけるものであると言える。

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