キャッシュフローの観点が抜けている銀行の審査~前編~

銀行にはキャッシュフロー計算書の概念が欠如している。

もしかしたら意外に思われる方も多いかもしれないが、銀行の審査は基本的にBS(貸借対照表)重視である。所有している上場有価証券や不動産等を調べ、時価評価をしたり、他行の借入残高や残高証明書をもらって確認したりするのだ。

筆者が銀行に在籍していた時は、とにかく細かくBSを見るように指導された印象がある。

現在は事業会社で経理業務に従事しているが、その立場にいるとキャッシュフロー計算書の重要性を感じることが非常に多い。実際に事業を運営していく上で、現金の増減が経営にダイレクトに影響するからである。

その観点から銀行時代を思い返してみると、キャッシュフロー計算書をあまり意識していなかったことに気付かされた。

考えてみれば、当時の顧客の大半を占める中小企業の決算書にはキャッシュフロー計算書は普通付いていないし、改めて作るようなこともしなかった。

しかし、このキャッシュフロー計算書は審査する上でも大変有用である。

東京商工リサーチのサイトに下記記載があったので引用する。

キャッシュ・フロー計算書(間接法)の粉飾は、貸借対照表、損益計算書と比べて粉飾が難しいとされています。理由としては、キャッシュ・フロー計算書の粉飾はその目的や意志をつかみにくく、粉飾としての認識が難しい点があげられます。

これは逆に言い換えると「BSやPLで粉飾していたとしても、キャッシュフロー計算書を見れば不自然さが露見する可能性がある」ということだ。要するに粉飾の察知に有効な手段のひとつなのである。

元銀行員として、審査にキャッシュフロー計算書が有効利用されていないのは非常に残念であり、ぜひ活用していただきたいものである。

次回は具体例を挙げてみようと思う。

参考文献

粉飾決算の手口(3)~キャッシュ・フロー計算書の粉飾~ 東京商工リサーチ

この記事の著者 YOUKI について

SlofiAでは金融・財務分析関係を専門に執筆。元銀行出身で融資関連業務の経験が中心。現在は上場企業の経理を担当。

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