決算でなんとしても当期純利益を黒字に持っていきたいと考える企業は実に多い。
黒字必達のために、在庫を増やしたり、有価証券を売却するなどして特別利益を計上するところもある。
実際に私の周りでも、なんとか利益を黒字に持っていけばお金を借りやすくなるという認識は結構な人が持っているようである。
果たして本当にそうなのであろうかを元銀行員としてお伝えしたいと思う。
結論から言うと、借りる側が考えているほど当期純利益を重視していない。
その理由は至って簡単で「当期純利益は操作しやすいから」である。
先程もお伝えした通り、在庫を増やしたり、有価証券を売却することで、利益を上積みできる点を銀行側も当然承知している。
つまり、当期純利益=その企業の実力とは考えていない。
実際に決算書の中身を見て、会社の本来の実力とは関係ないものを取り除き判定する。
在庫の増加は回転期間を見れば傾向が掴めるし、有価証券の売却は特別利益を見れば明らかだ。
したがって、一見黒字に見えていても、それら要因を取り除いだ結果が赤字であれば、評価は赤字と同じになる。
実際に審査をしていた際には在庫増やしている企業もよく見かけたが、そういった在庫が市場環境の変化により後々デッドストックになるケースも往々にしてあった。
それにより、キャッシュフローに影響を与えるのは企業活動として害悪でしかない。
企業活動の本質的な目標は「継続的に利益を生み出すこと」であり、「良く見せること」では決してない。
本件については反対意見もあるだろうが、1人の銀行員の意見としてご参考にしていただければと思う次第である。